一般社団法人 日本電子機器補修協会
静岡県・焼津港の遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」は68年前、太平洋ビキニ環礁での水爆実験で被ばくし、広島・長崎に続く「第3の核被害」に遭った。その後は大学の練習船に変わり、現在は東京都内の施設で展示されている。改造を担った元船大工木村九一さん(90)=三重県伊勢市=は「核被害は絶対に繰り返してはいけない」と訴える。
同船は1954年3月1日に被ばくした後、同年5月には文部省(当時)が買い上げて改造が決まった。残留放射能に問題はなかったが、業者は「死の灰」を浴びた船体の工事を敬遠。伊勢市の強力造船所(現ゴーリキ)が手を挙げた。
従業員だった木村さんは、終戦後間もなく入社していた。自ら設計図を引いて改造するのは初めての経験。当時の上司は「母港の焼津で調べたけど大丈夫やから」と言ったが、「長さや幅を測るために船内に入るのは怖かった」と振り返る。
会社では作業を嫌がり退職した人や、銭湯での入浴を断られた人もいたという。船は船名を布で隠し、朝一番でえい航され持ち込まれた。周囲の人は「幽霊船がやってきた」と話していた。
木村さんらの努力で船は被ばくから約2年半後、大学の練習船「はやぶさ丸」に生まれ変わった。船は毎年夏の練習航海などに使われたが、67年3月には廃船処分となり、都内のごみ埋め立て場に放置された。その後、市民らによる保存の訴えが結実し、現在は東京都江東区の都立第五福竜丸展示館で被ばくの惨禍を訴え続ける。
木村さんは「ロシアによるウクライナ侵攻も続く中、この船を写真や映像でもいいから見て、核兵器や世界平和のことを思ってほしい」と強調。「広島・長崎に続いた核被害を繰り返してはいけない。そのためにも、この船を永久に残してほしい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕第五福竜丸の元を訪れた元船大工の木村九一さん。左手前は改造した際の図面=6月7日、東京都江東区の都立第五福竜丸展示館
〔写真説明〕第五福竜丸の元を訪れた元船大工の木村九一さん=6月7日、東京都江東区の都立第五福竜丸展示館
2022年08月08日 16時44分
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