能登の「いしる」継承に奮闘=22歳女性「古里の味守る」―石川



石川県能登地方に古くから伝わる魚醤「いしる」を継承するため、「輪島朝市」出店者で最年少の22歳女性が奮闘している。能登半島地震で自家製のいしるはほぼ全滅し、加工場も生産停止を余儀なくされた。それでも前を向き、能登の古里の味を守るためクラウドファンディング(CF)を活用して再起を図る。

地震で一帯が焼失した石川県輪島市の輪島朝市で約30年前から水産加工品などを販売してきた「南谷良枝商店」。南谷美有さん(22)は2年前から実家の店で働く。きっかけは高校3年の時の職業体験。高校の厳しい寮生活から逃れようと軽い気持ちで実家を体験先に選んだが、そこで目にしたのは朝市で生き生きと働く母の良枝さん(48)と祖母の姿だった。「私もあんなふうに働きたい」。大学進学も考えていたが、3代目として家業を継ぐことを選んだ。

店のいしるは、塩を混ぜた魚介類を通常より長い3~5年熟成させて作る。曽祖母から伝わる製法だといい、「臭みが少なく、コクとうま味がある」と胸を張る。

元日の大地震では店の倉庫が全壊。いしるのたるが転倒し、計7トンがほぼ全て流出した。地割れで傾いた加工場は6年前に借金をして設備を整えたばかり。「もうだめだと思った」。自宅も被災し、今も家族と金沢市で避難生活を送る。

地震で廃業を決めた業者の話も耳にする中、知人から勧められたのがCFだった。「加工場を再建し、もう一度いしるを作りたい」。熱い思いをつづり、支援を呼び掛けると、4月26日までに1500万円以上が集まった。

全国から870件を超える応援コメントも寄せられ、南谷さんは「本当にありがたい。また頑張ろうという気持ちになれる」と笑顔を見せる。「能登にとっていしるは古里の味。この味を守っていきたい」と意気込んだ。

CFは5月1日まで受け付ける。4日には金沢市で開催される「出張輪島朝市」に出店する予定。

【時事通信社】 〔写真説明〕地震で転倒し、ほぼ全てが流出した「いしる」のたるを見つめる母の南谷良枝さん=1日、石川県輪島市(南谷美有さん提供) 〔写真説明〕地震で地割れが起き、損壊した加工場と倉庫。いずれも使用不能となった=3月13日、石川県輪島市(南谷美有さん提供)

2024年04月29日 07時16分


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