弱り目自民、続く正念場=静岡知事選、与野党対決に



静岡県知事選が9日告示され、与野党対決の構図が決まった。自民党にとっては4月の衆院3補欠選挙で全敗した衝撃が生々しく、結果次第で岸田文雄首相(党総裁)に対する党内の不満が高まるのは必至だ。自民派閥の裏金事件を受けた逆風は収まっておらず、政権にとって正念場が続く。

「一般論で言うと、地方選は地域の課題に対し、地元の皆さんが判断するものだ」。林芳正官房長官は9日の記者会見で、静岡知事選の位置付けを問われ、こう語った。選挙結果が政権の評価を直ちに示すわけではないと予防線を張った形だ。

その言葉とは裏腹に、政権は静岡知事選に神経をとがらせている。先月28日投開票の衆院3補選のうち、自民は2補選で不戦敗に。総力を挙げた島根1区でも立憲民主党との一騎打ちに完敗した。静岡知事選の結果が振るわなければ、政権が負った傷がさらに深まるのは避けられないためだ。

川勝平太知事の突然の辞職に伴う知事選は自民にとって想定外だった。立民や国民民主党が前浜松市長の推薦を決定し、自民県連が元総務官僚の支援に動く中、党本部は与野党相乗りや県連推薦、不戦敗の可能性も探った。関係者によると、最終的に党本部推薦を決断したのは首相だった。

自民幹部は「推薦を出さなければ『また不戦敗』と言われる。正攻法の方が打撃が小さいと考えた」と首相の判断を解説する。党本部は告示前日の8日にようやく推薦を決定。首相周辺は「国会議員にどんどん応援に入ってもらう」と語った。

もっとも、塩谷立・元総務会長が裏金事件で離党に追い込まれ、宮沢博行前防衛副大臣が女性問題で議員辞職するなど、静岡出身の議員は不祥事続きだ。党内には「自民色を前面に出すと支持が離れる」(関係者)と懸念する声もあり、党幹部の一人は「応援要請がない」と打ち明ける。

連立を組む公明党はいち早く自主投票を決定。同党内からは「野党系候補の支援に動く地方議員がいるかもしれない」(幹部)との見方も漏れる。

一方、補選全勝に勢いづく立民は「今回も与野党対決を確実に制したい」(選対幹部)と鼻息が荒い。岡田克也幹事長は記者会見で「党として全力を挙げたい」と総力戦で臨む考えを示した。立民と「共闘」する国民民主党幹部は「相手は事実上の自民候補。勝ち切りたい」と語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕首相官邸に入る岸田文雄首相=9日午前、東京・永田町

2024年05月10日 07時07分


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