ロシアのプーチン大統領は21日、ビデオ演説し、侵攻するウクライナ東部ドニプロに向けて新型の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」を初めて使用したと発表した。ウクライナ空軍は先に大陸間弾道ミサイル(ICBM)攻撃を受けたと主張。ロイター通信によると、米当局者は中距離弾道ミサイルという見方を示していた。
バイデン米政権がウクライナに供与した長距離兵器によるロシア本土攻撃を容認し、西部2州に19日以降、米国製の地対地ミサイル「ATACMS」と英国の巡航ミサイル「ストームシャドー」が撃ち込まれたことへの対抗措置という。プーチン氏は「地域紛争(侵攻)は世界的な性質を帯びた」と警告した。
タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は「発射30分前」に自動システムで米国に通告したと説明。一方、ジャンピエール米大統領報道官は、数日前に情報を探知し、同盟国やウクライナと共有していたと明らかにした。首都キーウ(キエフ)の一部西側諸国の大使館が20日に安全上の理由で休館したことに関連がありそうだ。
かつて米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約は、射程500~5500キロの地上発射型ミサイルを禁止していたが、トランプ米政権が2019年にロシアの違反を理由に破棄を通告し、条約は失効した。これに関してプーチン氏は21日の演説で「米国は間違いを犯した」と非難。トランプ次期大統領が必ずしもロシアに融和的な態度を取らないことも念頭に、就任前にけん制した可能性がある。
演説では、米国が欧州や日本を含むアジア太平洋地域で中距離ミサイル配備を計画中だと指摘。ロシアも対抗して配備するかは「米国とその衛星国の行動に応じて決定する」と述べた。
米英の長距離ミサイルによるロシア本土攻撃の動きを受け、プーチン氏が発言するのは初めて。ウクライナに兵器を供与した国々を標的に「ロシア製兵器を使う権利がある」と威嚇した。戦況に影響は与えず、ロシア軍は前進しているとも豪語した。ただ、ストームシャドーが使用されたクルスク州では兵士らに死傷者が出たという。
【時事通信社】
〔写真説明〕21日、モスクワでビデオ演説するロシアのプーチン大統領(EPA時事)
2024年11月22日 12時34分