米「不在」狙いアジア接近=習政権、影響力拡大図る―中国



【慶州時事】中国の習近平国家主席は1日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた韓国訪問の日程を終えた。多国間外交を軽視する姿勢が目立つトランプ米大統領の「不在」を好機と見て、アジア諸国への影響力拡大を図った。

「中国の対外開放の扉は閉ざされず、さらに大きく開かれていく」。APEC開幕日の10月31日、習氏はこう力説し、多国間貿易体制と開かれた地域経済共同体の構築を訴えた。トランプ氏は前日に帰国しており、会議は中国の独壇場の様相を呈した。

中国の一連のアジア外交は10月下旬、李強首相の東南アジア歴訪から始まり、トランプ氏のいない隙間を埋める形で日程が組まれた。

同26日からマレーシアで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議では、初日のみ参加したトランプ氏が出国すると、すかさず李氏が現地入り。後半2日間の会議では、米国の高関税政策を念頭に「保護主義への反対」を唱え、ASEANとの自由貿易協定(FTA)拡充を進めると表明した。

韓国では、トランプ氏がAPEC首脳会議の開幕前に帰国したのに対し、習氏は10月31日から2日間の会議に参加した。入れ替わりとなったトランプ氏と空港で会談した後、日韓など関係がぎくしゃくしてきた国の首脳とも個別に会い、接近を図った。

中国共産党は10月の重要会議「第20期中央委員会第4回総会(4中総会)」のコミュニケで、2035年までに「国際的影響力を大幅に高める」との目標を掲げた。習氏はトランプ氏との会談で「2大国」という言葉を強調し、米国と対等な存在としての中国を印象付けようとした。

来年のAPEC首脳会議は中国が主催し、一方の米国は20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の議長国となる。習政権は今後、米国と並ぶ「G2」としてのアピールをさらに強めていくとみられる。

ただ、自由貿易や秩序の「守護者」として振る舞う中国に国際社会が信頼を寄せているわけではない。習政権は今回、トランプ氏との首脳会談後にレアアース(希土類)の輸出規制を延期する方針を示した。しかし、規制はいつでも再開できる。習政権のさじ加減一つで各国の産業に打撃を与え得る状況は変わらず、世界の経済安全保障に対する懸念は高まったままだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕1日、韓国・慶州で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で発言する中国の習近平国家主席(ロイター時事)

2025年11月02日 07時00分


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