
立憲民主党は12日の参院予算委員会で、教育勅語や慰安婦問題など、高市早苗首相が過去に物議を醸したタカ派的発言を追及した。首相は歴代政権の答弁ラインから踏み出さず、「安全運転」に徹した。
「日本国憲法、教育基本法の制定をもって法制上の効力が喪失している。政府として教育現場で教育勅語の活用を促す考えはない」。首相は教育勅語を「称賛」していたと立民の杉尾秀哉氏から指摘されると、従来の政府見解で押し通した。
戦前・戦中の教育規範とされた教育勅語は親孝行などの徳目を説く一方、国家危急の大事の際は身をささげて国に尽くすよう要求。保守派の一部は今も内容を評価している。
首相は自らのウェブサイトに掲載する2012年9月3日付のコラムで「現代においても尊重するべき正しい価値観」「見事な教育勅語」と記した。今も閲覧できることについて、首相は「過去のコラムも、撤回したものも含めて全てを掲載している」と説明した。
衆参両院は1948年、教育勅語の失効・排除を確認する決議を採択。今年7月には阿部俊子文部科学相(当時)が記者会見で「学校教育で用いることは許されない」と表明した。首相の答弁はこうした立場に沿ったものだ。
杉尾氏は歴史認識でも首相をただした。慰安婦問題に関し、1993年に河野洋平官房長官が発表した談話は「おわびと反省」を明記。これに対し首相は第2次安倍政権で自民党政調会長だった2014年、河野談話に代わる新たな官房長官談話の発表を政府に求めていた。
杉尾氏が河野談話を引き継ぐか確認を求めたのに対し、首相は「継承する」と応じた。首相は戦後50年に発表された村山富市首相談話もかつて批判していたが、首相就任後は「歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」と強調。杉尾氏は「首相になって変わった。君子豹変(ひょうへん)す、を期待したい」と皮肉った。
首相は先の衆院予算委で、台湾有事は日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得ると答弁するなど、波紋を広げる場面があった。参院で独自色を抑えていることについて、自民関係者は「譲れるところは譲らないと政権は維持できない」と説明した。
立民幹部は「首相は隠しているが、危ない考え方を持っている。政府見解との矛盾を突いていく」と指摘。首相の「右派」的な言動を今後もあぶり出す方針だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院予算委員会で答弁する高市早苗首相=12日、国会内
〔写真説明〕参院予算委員会で質問に答える高市早苗首相=12日、国会内
2025年11月12日 20時33分