
【ワシントン時事】米史上最長となった政府閉鎖は、野党民主党の一部議員がつなぎ予算案の採決で造反し結末を迎えた。民主党は最大の焦点だった医療保険制度(オバマケア)で実質的な成果を得られなかった。指導部の求心力は低下し、交代を求める声も噴出。民主党急進左派のウォーレン上院議員は12日、自身のX(旧ツイッター)で「民主党はもっと強く闘うことを求められている。団結して立ち向かうべきだ」と不満を表明した。
トランプ政権は政府閉鎖を機に、政府職員の自宅待機にとどまらず4000人超の解雇を断行した。これに対し、民主党支持の職員労働組合が窮状を訴え、多くの職員が居住するバージニア州選出の民主党議員らは独自に与党共和党と交渉。解雇の撤回や未払い給与の支給などを条件に、共和党主導の修正予算案の賛成に回った。
民主党上院トップのシューマー院内総務ら指導部は、年末に失効するオバマケアを継続するための補助金延長を要求し、政府閉鎖突入後も徹底抗戦の構えを崩さなかった。2025年度予算を採決した3月に、政府閉鎖の回避を優先して賛成したことで党内左派から猛反発を受けた苦い経験があるからだ。指導部には、オバマケアを来年の中間選挙の争点とする思惑もあった。
しかし、結果的に造反を許し、共和党がオバマケアで譲歩することはなかった。党内からは批判が相次ぎ、モールトン下院議員は「シューマー氏は党内を掌握できていない。新しい指導者が必要だ」と、シューマー氏に退任を求めた。
一方、先の3地方選全敗で沈滞ムードが漂っていた共和党には、政府閉鎖の解除に安堵(あんど)感が広がった。世論調査では、政府閉鎖の責任は政権と共和党にあるとする回答が多数を占める。閉鎖により航空管制官の不足で航空便が欠航し、経済活動への混乱が拡大。多くの人が移動する感謝祭休暇を今月下旬に控え、党内には中間選挙に向けて逆風がさらに強まることへの懸念があった。
トランプ大統領は、政府閉鎖中にもかかわらず日本を含む外国を訪問するなど、表面上は意に介さない態度を見せていたが、内心は焦っていたとみられる。地方選後は「政府閉鎖が(敗北の)大きな要因だ」と率直に認め、予算案が議会を通過すると間髪入れず成立のための署名を行った。
【時事通信社】
〔写真説明〕米民主党のシューマー上院院内総務=4日、ワシントン(EPA時事)
〔写真説明〕12日、ホワイトハウスでつなぎ予算案修正案の署名に臨むトランプ米大統領(EPA時事)
2025年11月14日 12時40分