
高市早苗首相が意欲を示す日朝首脳会談の実現に向けた道筋が見えない。北朝鮮による拉致問題の解決を目指し、首相は「手段を選ばない」と述べるが、北朝鮮から色よい反応はないもようだ。拉致問題は小泉政権下の2002年と04年に被害者と家族が帰国して以降、こう着状態が続いている。
13歳の中学生だった横田めぐみさんが拉致されてから15日で48年。首相は14日に記者団の取材に応じ、「02年に5人の被害者が帰国して以来、横田さんを含めて一人の被害者の帰国も果たせていないことは本当に申し訳ない」と陳謝した。
その上で「日朝の新たな実りある関係に向け、首脳同士で正面から向き合い、果敢に行動することで成果に結び付けたい」と強調。「あらゆる選択肢を排除せず、何としても私の代で突破口を開きたい」と語った。
首相が北朝鮮側に金正恩朝鮮労働党総書記と会談したい意向を「既に呼び掛けた」と表明したのは3日に開かれた拉致問題に関する集会。政府が日朝間の水面下のやりとりを明かすのは極めて異例だが、その後、具体的な動きはない。
首相の発言は焦りの裏返しともみられている。拉致問題の発生から50年近くがたち、被害者家族の高齢化が進み、残された時間が少なくなっている。さらに北朝鮮を巡る国際情勢が激変した影響も大きい。ウクライナ侵攻を続けるロシアは北朝鮮と軍事面の連携を強化。中国も合わせた「中ロ朝」3カ国も接近し、「日本にとって好ましくない環境」(政府関係者)となった。
首相官邸幹部は拉致問題について「これまで進展がなかったのだから同じことをしていても仕方がない。違うことをやらなければ状況は動かない」と説明。首脳会談の呼び掛けの前に日朝間で水面下の交渉がなかったことを示唆した。
ただ、北朝鮮は24年3月に、金与正朝鮮労働党副部長が「日本との接触や交渉を無視し、拒否する」との談話を発表したのを最後に表だった反応を示していない。北朝鮮は今月7日に弾道ミサイルを発射するなど挑発行動を続ける。
日本外務省関係者は「トランプ米大統領と金総書記の米朝首脳会談が実現すれば、日朝交渉も前進する」と期待を込めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕記者団の取材に応じる高市早苗首相=14日午後、首相官邸
〔写真説明〕北朝鮮の拉致問題に関するシンポジウムに出席した、横田めぐみさんの母・早紀江さん=2024年12月、東京都千代田区
2025年11月15日 07時07分