高市首相「自前答弁」に危うさ=序盤論戦、立民の追及不発



高市早苗首相は14日の参院予算委員会で今国会序盤の論戦を終えた。秘書官が用意した資料に頼らず自分の言葉で答える場面が多かったが、台湾有事を巡っては従来の政府見解から踏み込み、物議を醸す危うさも見せた。一方、立憲民主党は「政治とカネ」の問題も追及したが、高い内閣支持率にひるんだのか消化不良に終わった。

「企業側が残業を過度に抑制している。十分な賃金がもらえないことで、副業をしている人がいる」。首相は14日の質疑で、労働時間規制の緩和についてこう強調。手元のペーパーに目を落とすことはほとんどなかった。

周辺によると、首相は「役所が作成した答弁に全てペンを入れて書き直している」という。6日間の衆参予算委を通じ、関節リウマチが持病であることや最近の睡眠が「2~4時間」であることなど、プライベートも隠そうとしなかった。自民党関係者は「答弁姿勢が高い内閣支持率に寄与している」との見方を示した。

ただ、こうした姿勢はもろ刃の剣にもなり得る。7日の衆院委では、台湾有事は「存立危機事態になり得る」と表明。台湾を「核心的利益の中の核心」と位置付ける中国に配慮し、歴代首相は明言を避け続けてきた。中国は激しく反発しており、日中間の新たな懸案になるのは避けられない情勢だ。

非核三原則も議論となった。「持たず、作らず、持ち込ませず」のうち、首相は「持ち込ませず」の見直しが持論。れいわ新選組の議員が「国是」として維持するように求めたが、「現段階で堅持している」とかわし、「大変疑問に感じる」(斉藤鉄夫公明党代表)などと批判を招いた。

これに対し、立民の追及も迫力を欠いた。参院委で、論客の蓮舫氏は自民の派閥裏金事件に関係した佐藤啓官房副長官の交代を要求。杉尾秀哉氏は教育勅語を礼賛した首相の認識をただしたが、いずれも見せ場はつくれなかった。日本維新の会の藤田文武共同代表に関する公金還流疑惑や、林芳正総務相が選挙運動員を買収したとの週刊誌報道は取り上げなかった。

関係者は「支持率が高く攻めにくい」と漏らす。幹部は12月と見込まれる2025年度補正予算案の審議を念頭に、「本人より大臣から攻める方がいい。資質に欠ける大臣が数人いる」と標的を広げる考えを示した。

【時事通信社】 〔写真説明〕参院予算委員会で答弁する高市早苗首相=14日午後、国会内 〔写真説明〕参院予算委員会を終えた高市早苗首相(右端)=14日午後、国会内

2025年11月15日 07時06分


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