
法務省は9日、悪質な交通事故に適用する「危険運転致死傷罪」の要件を明確化するため、速度超過や飲酒量に関する数値基準を盛り込んだ自動車運転処罰法改正案を、法制審議会(法相の諮問機関)の部会に示した。現行法のあいまいな規定を見直し、一定の数値を明示することで、適用のハードルを下げ、司法判断のばらつきを解消する狙いがある。
政府は、来年の通常国会への改正案提出を目指す。
現行法は、危険運転の速度について「進行を制御することが困難な高速度」、飲酒について「正常な運転が困難な状態」と規定。要件が抽象的なため、大幅な速度超過や飲酒があっても、危険運転致死傷罪より刑が軽い「過失運転致死傷罪」にとどまるケースが相次ぎ、遺族らが見直しを求めていた。
改正案は、速度の基準を(1)制限速度が時速60キロを超える高速道路などでは「60キロ超過」(2)制限速度60キロ以下の一般道では「50キロ超過」―と明記した。
飲酒に関しても、呼気1リットル当たり0.5ミリグラム以上(または血液1ミリリットル当たり1.0ミリグラム以上)と規定。酒気帯び運転の基準(0.15ミリグラム)や、免許取り消しの基準(0.25ミリグラム)を大きく上回る数値とし、酩酊(めいてい)状態を客観的に認定できるようにした。
【時事通信社】
〔写真説明〕自動車運転処罰法改正案について議論する法制審議会の部会=9日午前、法務省
2025年12月09日 11時52分