
外科医の負担軽減や若手の育成に役立つ「手術支援AI(人工知能)」の開発が進んでいる。国内では高齢化で2040年ごろにがん患者数がピークに達する見込みだが、手術を担う外科医は労働環境が過酷なこともあり、成り手が集まらない。政府も危機感を持ち、技術開発に取り組む企業への支援を進めている。
日本消化器外科学会によると、23年時点で約1万6000人だった65歳以下の消化器外科医は43年に半減し、大幅な人材不足が生じる見込み。新たな担い手がいなければ、「見て覚える」教育に頼ってきた技術継承も困難になる。
こうした課題をAIで解決しようとする動きがある。新興企業のディリーバ(東京)が開発した手術支援ソフトは、臓器や血管の映像を生成AIが分析し、注意点や手順などを文章化して執刀医に伝える仕組みだ。国内外の医療機関と連携し、熟練医の手術データを中心に学習させている。
開発には多額の資金や高い計算処理能力が必要になるため、経済産業省主導のプロジェクトに参画し、支援を受けた。創業者で外科医の竹内優志代表取締役は「AIで手術のストレスや患者の合併症を極限まで減らし、執刀医を支える『もう一人の助手』にしたい」と話す。
まずは教育ツールとしての活用を想定しており、年内にも提供を開始する。2月には医学生が胃がんの手術を見ながら同社のAIに質問する実証実験を行い、回答を専門医が検証したところ、85~90%の正答率を記録した。今後は対応できる症例を増やし、精度を高めていく考えだ。
ただ、医療は人命に直結する分野だけに、AIの活用には高い規制の壁が立ちはだかる。厚生労働省はAI医療機器の審査体制整備を進めているが、手術支援AIは実例が限られ、評価基準はまだ確立していない。実用化に向けては、技術開発だけでなく安全性の検証や法整備など、乗り越えるべき多くの課題が山積している。
【時事通信社】
〔写真説明〕手術支援AIに質問する医学生(ディリーバ提供)
2026年06月10日 07時25分