ロシア主導の旧ソ連圏経済ブロック「ユーラシア経済同盟」の一連の会合がモスクワで開かれ、加盟国の亀裂が一瞬、表面化した。中央アジア・カザフスタンのトカエフ大統領は24日のフォーラムで、連合国家創設を視野に入れるロシアとベラルーシに言及。「今や核兵器まで共有しようとしている」と述べ、経済や安全保障での対等な関係を害していると苦言を呈した。
◇ウクライナと同じ
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は3月、対立する北大西洋条約機構(NATO)を威嚇すべく、緩衝地帯に当たるベラルーシに戦術核兵器を配備することでルカシェンコ大統領と合意したと公表。トカエフ氏はこの「核共有」を問題視した。
最近浮上した健康不安説を一掃しようと、ルカシェンコ氏もフォーラムに駆け付けた。トカエフ氏の言葉を聞いて苦笑い。プーチン氏の顔を見詰めた。
旧ソ連セミパラチンスク核実験場の放射能汚染の後遺症に苦しむカザフは「核兵器廃絶」が外交課題だ。ロシアは、米国と同盟国による核兵器の共同運用と同じだとしてベラルーシ配備を正当化しているが、トカエフ氏の目には「核拡散」と映ったようだ。
ウクライナやベラルーシと同様、カザフはソ連崩壊後に残された核の保有国となった。3カ国は1994年、安全保障と引き換えに核放棄に応じる「ブダペスト覚書」を結んだが、ウクライナはロシアに侵攻された。カザフはロシア系住民を多く抱える点もウクライナと似ている。かつて「カザフに国家は存在しなかった」と発言したことがあるプーチン氏への不信感は根強い。
カザフはロシアの勢力圏にとどまる一方、対中接近が著しい。トカエフ氏は17日、中国を公式訪問して習近平国家主席と会談し、ビザ(査証)の相互免除で合意したばかりで、巨大経済圏構想「一帯一路」の中で存在感を増している。
◇ロシアの求心力問う
ユーラシア経済同盟は25日に首脳会議を開催。ロシアが求心力を維持できるかどうかも焦点となった。ただ、加盟国はアルメニア、カザフ、キルギス、ベラルーシ、ロシアの5カ国にとどまり、それ以外の旧ソ連構成国は加わっていない。
アルメニアのパシニャン首相は25日、モスクワ訪問の機会を利用し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領と会談を調整。係争地ナゴルノカラバフを巡る緊張緩和を模索中だ。しかし、アルメニアは平和維持部隊を派遣するロシアの「機能不全」を訴えており、米国や欧州連合(EU)の仲介も頼るようになった。
【時事通信社】
〔写真説明〕カザフスタンのトカエフ大統領=2022年5月、ビシケク(EPA時事)
〔写真説明〕ロシアのプーチン大統領=24日、モスクワ(EPA時事)
〔写真説明〕ベラルーシのルカシェンコ大統領=2月16日、ミンスク(AFP時事)
2023年05月25日 15時04分