連覇の夢は果たせなかった。準々決勝で敗れ、敗者復活戦を棄権した柔道女子78キロ超級、素根輝選手(24)=パーク24。東京五輪以降、けがやプレッシャーに苦しみ、弱音も吐いた。心身共に支えたのは練習パートナーでもある兄勝さん(28)だった。
小学校時代から全国トップクラスだった素根選手。学校や柔道クラブでの練習が終わると、父が自宅につくった練習場で勝さんら兄3人と深夜まで稽古に励んだ。父からは「強くなるには誰よりも努力しないといけない」と口酸っぱく言われた。
体格が似た勝さんとコンビを組んだのは高校2年の時。練習は納得がいくまでやった。乱取り稽古は4分15セットが基本で、さらに追加することも。勝さんは「練習の虫だった」と振り返る。
素根選手が2019年の世界選手権を制し、兄妹で東京五輪を目指していた矢先、開催の1年延期が決まった。勝さんは鍼灸(しんきゅう)師資格を取得するための勉強があり、やむなくコンビを解消。妹の活躍を地元の福岡県で見守った。
会わない日々が続いたが、昨年8月、勝さんが出場した大会会場で偶然再会。妹には、どこか苦しんでいる様子が見て取れた。「できることがあったら言ってね」。そう告げてその場は別れたが、同12月ごろに「なかなか練習に打ち込めない。もう駄目」と相談を受けた。
けがに加え、周りの期待やプレッシャーも感じていた。「追う立場の方が良かった」と吐露することもあった。勝さんは「連覇を狙える選手は少ない。輝にしかできないことだ」と励まし続けた。
勝さんは昨年末から再び妹の練習パートナーとしてそばで支える。柔道整復師や鍼灸師の資格を生かし、身体のケアも手掛ける。「気持ちを上げてくれるありがたい存在」。素根選手はそう感謝している。
【時事通信社】
〔写真説明〕練習で言葉を交わす柔道女子78キロ超級の素根輝選手(左)と兄の勝さん=6月26日、東京都北区
〔写真説明〕兄の勝さん(右)と練習する柔道女子78キロ超級の素根輝選手=6月26日、東京都北区
2024年08月02日 23時53分