自民党の高市早苗経済安全保障担当相(63)が2度目の党総裁選出馬を表明した。2021年の前回総裁選で後ろ盾だった安倍晋三元首相の死去で、議員への支持拡大に陰りも見られる中、公約は「総合的な国力の強化」を前面に幅広い分野を網羅。当面は「憲法改正」や「皇室」など保守色の強い主張を抑え、党内により幅広く浸透を図る構えだ。
「経済成長をどこまでも追い求める。日本をもう一度、世界のてっぺんに押し上げたい」。9日の記者会見で高市氏はこう述べ、財政出動を伴う「強い経済の実現」に、最優先で取り組む考えを打ち出した。
前回、1回目投票の議員票で2位に付けた高市氏は、その後も「再戦」への意欲を示してきた。会見で掲げた公約は農業やエネルギー、外交・安全保障など多岐にわたり、党関係者は「こつこつと準備してきた内容だ」と評価する。
当時との決定的な違いは、保守派の中心人物だった安倍氏の不在だ。安倍氏は前回、安倍派を中心に高市氏への支援を働き掛けたが、今回は同派中堅らが小林鷹之前経済安保担当相(49)の陣営に結集。高市氏は告示日近くまで出馬のめどが立たず、「推薦人の引きはがしに遭っている」と弱音を漏らす場面もあった。
一方で、党内外の保守層からは安倍氏の死去後、高市氏を「後継者」と期待する声も上がる。高市氏自身もそのことを意識。会見では「『女性初の首相、いいじゃないか』との(安倍氏の)言葉を胸に全力投球していく」と訴えてみせた。
かつてない乱戦模様の総裁選に向け、陣営幹部は「『中道保守』を含む幅広い党員票で支持を伸ばし、決選投票に持ち込む」との青写真を描く。実際、高市氏は会見で「皇室は日本にしかない宝物」と述べつつ、皇室典範改正への具体的な対応について言及を避けた。靖国神社参拝や改憲時期などでも踏み込んだ発言はなく、これまでの「岩盤保守」イメージと一線を画す狙いが透ける。
もっとも、こうした戦略について「既存の支持層は不満を持つ」(閣僚経験者)との指摘もある。派閥裏金事件への対応では、「ちゃぶ台返しのようなことをしたら独裁だ」と再調査などに消極的な考えをにじませており、今後追及される場面がありそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕記者会見で自民党総裁選への立候補を表明する高市早苗経済安保担当相=9日午後、国会内
〔写真説明〕自民党総裁選への立候補を表明し、記者会見場を後にする高市早苗経済安保担当相(手前)=9日午後、国会内
2024年09月10日 07時06分