【ニューヨーク時事】米国で、人種や性の多様性に配慮する時流への風当たりが強まっている。従業員の多様性を尊重する経営方針を掲げたり、広告に性的少数者を起用したりする企業に反発する活動家が現れ、トヨタ自動車も標的に。11月の大統領選を前に、深刻化する社会の分断を色濃く映し出している。
米国では近年、人種差別や気候変動といった社会問題に関心が高い層は「woke(ウォーク)」と形容される。英語で「目覚める」という意味の動詞「wake」から派生したスラングで、日本語の「意識高い系」に近い。共和党大統領候補のトランプ前大統領支持者に多い保守派が、リベラル派を批判する文脈でよく使われる。
「職場で政治・社会的価値観を押し付けるな。多様性目標やウォークネス(意識の高さ)を捨て、どんな人も歓迎する場所にしてほしい」。保守派の活動家ロビー・スターバック氏は、多様性重視を打ち出す企業の姿勢を拒む自由もあるべきだと訴える。
X(旧ツイッター)で60万を超えるフォロワーを持つスターバック氏は、「意識高い系」企業への不買運動をけしかけ、経営陣に圧力をかける。二輪車大手ハーレーダビッドソンや自動車大手フォード・モーター、農機メーカー、ビール会社など米有名企業が最近、次々とターゲットにされ、従業員の「DEI(多様性、公平性、包摂性)」を推進する経営方針の変更を迫られた。
トランプ氏を支持するスターバック氏が最近標的としたのはトヨタだ。同社は性的少数者に配慮した活動などを支援。Xには「トヨタ車を買おうと思っていたけどやめた」といったトランプ支持者らの投稿が相次ぐ。トヨタ関係者は「トランプ氏が勝利すれば、こうした活動の勢いは増すだろう」と警戒している。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ前米大統領とハーレーダビッドソンの二輪車=2017年2月、ワシントン(AFP時事)
2024年10月02日 13時30分