石破茂首相は、経済対策の早期策定を当面の最優先課題に掲げる。衆院解散・総選挙をにらみ、物価高で苦しむ家計の支援策で有権者にアピールする。石破氏が緊縮的な経済政策を進めるとの懸念から株価が急落し、「石破ショック」と呼ばれたことも踏まえ、機動的に財政出動を行う姿勢を示して金融市場の沈静化を図る。
新政権は、賃上げと企業の投資拡大でデフレ脱却への道筋を付けた岸田政権の経済政策「新しい資本主義」の基本路線を継承する。石破氏は自民党総裁に選出された後、「物価上昇を上回る賃金上昇を実現するため、『新しい資本主義』にさらに加速度をつけていく」と強調した。
経済対策の財源の裏付けとなる補正予算の規模や内容が今後の焦点だ。石破氏は物価高対策について「例えば食料品、エネルギー(の高騰)に対して、どういった政策が最も有効であるか、よく見極めたい」と語っていた。終了が決まっている電気・ガス料金やガソリン代補助の延長も視野に入れている。
石破氏は安倍政権の経済政策「アベノミクス」に否定的で、積極的な財政出動に慎重だとされてきた。総裁選では金融所得課税の強化にも言及。アベノミクス継承を掲げた高市早苗前経済安全保障担当相を退けたことで、金融市場は円高・株安で反応した。石破氏は火消しに追われ、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させた岸田政権の政策を堅持すると繰り返し訴えた。
石破氏は安保政策や農政に精通する一方、経済・財政政策について語ることが少なく、自ら「至らぬ点がある」と認める。このため、財務相に旧大蔵省(現財務省)出身の加藤勝信元官房長官を起用。経済成長と財政健全化を両立させる姿勢を示し、安定感を演出した。
デフレ完全脱却を実現して日本経済を新たな軌道に乗せるため、新政権独自の成長戦略を打ち出せるかが今後の課題となる。来夏に参院選も控え、与党の歳出圧力が高まるのは必至。防衛費増額や子育て支援強化に向けた安定財源の確保など、先送りされた難題も山積しており、新政権の手腕が問われる。
【時事通信社】
2024年10月02日 11時07分
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