大詰めを迎えた米大統領選で、ヒスパニック票が割れている。中南米諸国にルーツを持つヒスパニック系市民は米国最大の人種的少数派(マイノリティー)で、伝統的に民主党支持の傾向が強かったが、近年は若年層の男性を中心に共和党支持者が増加。両陣営が支持獲得に奔走している。
◇質素な食事しか…
激戦州の一つで人口の約3割をヒスパニック系が占める西部ネバダ州。10月下旬、世界有数の歓楽街ラスベガスのホテル群を間近に臨む屋内競技場で、共和党のトランプ前大統領が選挙集会に登壇し、支持者が2階席まであふれた。同僚女性と参加したオルガ・ゴンザレスさん(49)も、その一人だ。
メキシコから移り住んで30年。娘との料理を楽しむ生活を送ってきたが、物価高が直撃し「質素な食事しか作れなくなった。(民主党の)ハリス(副大統領)のせいで貧しくなった」と嘆く。「トランプなら国を変えてくれる」と信じ、既に一票を投じたという。
州兵に所属しながら地元大学に通うガブリエル・ディアスさん(19)は「戦争が怖い。今の世界では前線にいつ送られるか分からない」と不安を吐露。「トランプは北朝鮮の金正恩(朝鮮労働党総書記)に会ったが、バイデン(大統領)は何もしない。トランプなら軍を強くして守ってくれる」。人生初の投票はトランプ氏に入れるつもりだと打ち明けた。
◇「正しい情報を」
ラスベガス郊外の住宅街では、大学生のカルラ・リベラさん(20)が強い日差しに汗をにじませながら、一軒ごとに呼び鈴を鳴らして回っていた。しばらく待って応答がなければ、民主党の政策や投票方法を記したチラシをドアに掛ける。
「女性が大統領になってほしい。そうすれば全ての女性がもっと活躍しやすくなる」。ハリス氏支持の理由をそう語るリベラさんは、ヒスパニック系非営利団体「メーク・ザ・ロード・アクション・ネバダ」の一員だ。約200人の選挙対策チームが州内各地で戸別訪問や電話で民主党への投票を呼び掛けている。
同団体幹部のロバート・ガルシアさん(24)は、両党が支持率で拮抗(きっこう)する中「直接会って少しでも政策を知ってもらうことが違いを生む」と力を込める。メンバーのシェイン・ハッチンズさん(28)も「トランプの時代の方が物が安かったというが、新型コロナ禍で経済が停滞していただけだ」と指摘。「正しい情報を広めることが重要だ」と活動の意義を強調した。
◇期日前は共和先行
ネバダ州では過去4回の大統領選で、民主党候補が勝利した。だが、フロリダ大が運営する「米国選挙プロジェクト」によると、10月末時点の期日前投票では、共和党が民主党を4.8ポイント上回っている。
メキシコから合法的に移住したというトラック運転手フランシスコ・サイエンさん(37)は、ラスベガス郊外の期日前投票所で共和党に票を入れた。「不法移民(への処遇)は不公平だ。われわれの税金が彼らに使われている」と不満をこぼした。
一方、ラゲル・アラナさん(48)は、人工妊娠中絶の権利を擁護する民主党に投じた。「私自身が女性で、娘も孫娘もいる。彼女たちを守りたい」。そう言って投票所を後にした。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ前米大統領の選挙集会=10月24日、西部ネバダ州ラスベガス
〔写真説明〕トランプ前米大統領の選挙集会場に設置された同氏支持の看板=10月24日、西部ネバダ州ラスベガス
〔写真説明〕米大統領選に向け、戸別訪問でチラシを残すカルラ・リベラさん=10月25日、西部ネバダ州ラスベガス郊外
〔写真説明〕取材に応じるヒスパニック系非営利団体「メーク・ザ・ロード・アクション・ネバダ」のロバート・ガルシアさん(左)=10月25日、米西部ネバダ州ラスベガス
2024年11月04日 17時39分