
日本の花形産業だった家電の担い手が変わりつつある。総合電機メーカーが不採算を理由に相次いで撤退する中、近年目立つのは国内の異業種参入。生産をやめて設計や開発に特化する動きもある。「日の丸家電」の新しい潮流は、「ものづくり」そのものの変化も映し出している。
「日本の製造業の手本になれたら本望だ」。家電量販大手ノジマは、日立製作所の家電事業を今年度中に買収することを決めた。野島広司社長は4月の記者会見で、消費者の声を生かした製品開発に自信を示した。
「豊かさの象徴」だったテレビや冷蔵庫。電機大手は技術を競い、自社ブランド製品を世界中で展開した。しかし、中国・韓国勢の低価格攻勢で収益が悪化し、2012年には旧三洋電機が中国ハイアールに冷蔵庫と洗濯機事業を売却。東芝も16年以降、白物家電事業とテレビ事業を中国企業に売却した。
一方、近年は担い手として国内企業も台頭する。09年には生活用品製造・販売のアイリスオーヤマ(仙台市)が本格参入。冷凍室がスペースの半分を占める冷蔵庫など、消費者ニーズに応える商品で人気を集める。家具大手ニトリホールディングスもシンプルで値頃感のある家電を展開。いずれも日本で開発し、海外工場で生産している。
ソニーグループはテレビ事業を中国TCLと設立する合弁会社に移管し、27年4月に事業開始を予定する。TCLの51%出資だが、本社は東京、最高経営責任者(CEO)もソニー側の人材。生産はTCLに任せ、設計やマーケティングで主導権を握り、映画やゲームなど主力のエンタメ事業と親和性のあるテレビの「実」を取る戦略だ。
早稲田大学大学院の長内厚教授は、「家電は組み立てが容易になり、数を売らないと利益が出なくなった。電機1社で企画から製造、販売までやるのは難しい」と指摘。その上で、「ノウハウが集まる開発現場を日本に残すことが重要。異業種が家電に参入しているのも日本の新しいものづくりの形だ」と話している。
〔写真説明〕アイリスオーヤマが開発した冷凍室が広い冷蔵庫(同社提供)
〔写真説明〕記者会見で握手するノジマの野島広司社長(右)と日立製作所の網谷憲晴執行役専務=4月21日、東京都中央区
2026年05月25日 07時53分