
「工房一会」(東京都大田区)の小野恒夫さん(76)は、氷彫刻師として初めて「現代の名工」に選ばれた。業界が縮小する中「氷彫刻に取り組んでいる人たちの励みになればうれしい」と笑顔で語る。
西洋料理人としてホテルで働いていた20代半ば、調理の傍ら、宴会場などに飾るため氷の彫刻を始めた。27歳の時に知人に誘われ、料理人を辞めて氷彫刻教室の講師に。30年以上にわたって国内外の約3000人を教えたという。現在はせっけんや果物の彫刻も作っている。
「見た人がすごいと思って、喜んでもらえるのが一番うれしい」と話す小野さん。こだわるのは表面の仕上げだ。チェーンソーなどで形作った像をノミで丁寧に削る。「削り方一つで光りが入ったときの輝き方が違う」と力を込める。氷のどの部分が輝くかまで計算した作品が広告業界で評価され、年間20~30本のCM制作に携わったこともある。
氷彫刻は1970~90年代に需要がピークを迎え、現在は国内の職人が減っているという。コロナ禍でパーティーなどの発注がなくなり、業界は苦境に立たされた。高齢化も進んでおり「一人でも多くの若い人に(氷彫刻の世界に)来てもらい、自分は若い人を支えていきたい」と意気込んだ。
〔写真説明〕「現代の名工」に選ばれ、インタビューに答える氷彫刻師の小野恒夫さん=4日、東京都大田区
〔写真説明〕氷彫刻師の小野恒夫さんが制作した氷の彫刻(本人提供)
〔写真説明〕氷の彫刻を作る氷彫刻師の小野恒夫さん(本人提供)
2025年11月08日 07時05分