
恒星の周りを回らずに単独で存在する「浮遊惑星」が急成長する様子を観測したと、イタリア・パレルモ天文台などの欧米研究チームが8日までに発表した。恒星が誕生する際と同様に、周囲に円盤状に集まったガスやちりを取り込んで成長。1秒間に60億トンのペースで大きくなり、通常の惑星を含めて観測史上最大という。
この浮遊惑星は、南半球で見える「カメレオン座」の方向にあり、地球からの距離は約620光年。質量は木星の5~10倍と推定される。木星の13倍より大きくなれば、重水素の核融合反応が起きて「褐色矮星(わいせい)」となり、恒星に近い形で自ら輝くことができる。
浮遊惑星は暗く発見しづらいが、近年の観測技術の発達で予想外に多いことが判明。通常の惑星のように恒星の周りで誕生した後、他の惑星の重力などの影響ではじき出されたか、恒星のようにガスやちりが円盤状に密集して誕生したものの、ミニサイズにとどまったのか、起源は謎に包まれている。
研究チームは欧州南天天文台の大型望遠鏡VLTなどを使い、この浮遊惑星を今年4~8月に観測。その結果、周囲のガスやちりを取り込むペースは当初の6~8倍に急増し、毎秒60億トンのペースが約2カ月間続いた。恒星の誕生時と同様に磁場が影響しているとみられ、「少なくとも一部の浮遊惑星の形成過程は恒星と似ている」と考えられるという。
論文は国際天体物理学誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズに掲載された。
〔写真説明〕地球からカメレオン座の方向に約620光年離れた「浮遊惑星」の想像図(中央)。周囲のガスやちりを取り込み、観測史上最大ペースで成長していた(欧州南天天文台提供)
2025年11月10日 16時09分