「文系への関心、科学深める」=ノーベル賞の2氏が対談―授賞式前、思い出の京大で



10年ぶりに日本人研究者の「ダブル受賞」となった今年のノーベル賞で、生理学・医学賞に選ばれた大阪大の坂口志文特任教授と、化学賞に決まった京都大の北川進特別教授が授賞式前の11月、ともに学んだ京大キャンパスで約1時間にわたり対談した。同じ74歳の2人は学生時代を振り返った上で、「研究や科学を深めるには、哲学などの文系学問にも関心を持つ必要がある」との考えで一致した。

1951年生まれの2人は、70年に京大に入学した。坂口さんが「学生紛争の影響で授業がない時期もあり、よく下宿で本を読んでいた」と話すと、北川さんも「1、2回生の頃は、人文社会系の授業で刺激を受けたら本を探して読んでいた。今とは違って学生に余裕があり、いろいろと考えることのできる良い時代だった」と応じた。

若手研究者の育成については、北川さんが「若者へのさまざまなサポート体制に加え、メンター(相談相手)になれる40~50代のシニアも支える必要がある」と指摘。坂口さんも同意した上で、若者に対し「留学する人がどんどん減っている。新しい世界を見てみようという積極性も必要だ」と注文を付けた。

急速に普及する生成AI(人工知能)と研究への影響についても意見を交わした。北川さんは「AIは論文を書くなどのアウトプットには強いが、何もない所から何かを発見するなどの源流は人間がやる必要がある」と強調。坂口さんは診断など医療分野でのAI技術の導入が進んでいることを踏まえ、「AIは使うものであって、使われるものではない。今後は若者たちがAIを使いこなす時代になるだろう」との見解を示した。

2人は最後に、自身の専門分野以外に関心を持つ重要性を改めて強調。「高校から大学にかけて哲学や音楽などに触れる機会を持ってほしい。若い時に頭に入れていると、自分のサイエンスをもっと深くしてくれる」(北川さん)、「サイエンスと芸術は似ている。サイエンスをより豊かにするために、文科系の学問も広く知っておく必要がある。若い時も年を取っても同様の態度を持つべきだ」(坂口さん)と口をそろえた。

〔写真説明〕握手を交わす大阪大の坂口志文特任教授(左)と京都大の北川進特別教授=11月10日、京都市左京区 〔写真説明〕懇談する大阪大の坂口志文特任教授(左)と京都大の北川進特別教授=11月10日、京都市左京区

2025年12月07日 07時05分


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