広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡り、対象者を拡大した新基準でも被爆者健康手帳の交付申請が却下されたとして、岡山市の女性が岡山県に却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、岡山地裁(大嶺崇裁判長)であった。県側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。
この日の弁論では、原告側代理人が女性に代わって意見陳述。「今から80年前の客観的資料を残している人などいない」と語った上で、「自分の記憶を否定されたような気持ちになり、ショックだ」と訴えた。
訴状によると、原告の女性は4歳の時に広島県津田町(現廿日市市)で黒い雨に遭い被爆。慢性肝炎を患っている。2024年3月、岡山県に手帳交付を申請したが、県は同年7月、「津田町に黒い雨が降ったとは確認できない」として却下した。
新基準は22年4月に運用開始。援護対象区域外でも黒い雨に遭った可能性が否定できず、がんなど11種類の疾病にかかっていれば、被爆者として認定している。
〔写真説明〕岡山地裁=岡山市北区
2025年06月10日 18時59分