政府は、企業活動に伴う人権侵害を防ぐため、「ビジネスと人権」に関する行動計画を年内に改定する。1日に意見公募を始めた改定計画案では、企業が人権侵害のリスクを把握し、被害の防止・軽減を図る「人権デューデリジェンス(DD)」実施や大企業に遅れる中小企業の体制整備などを、初めて「優先分野」として明示。サプライチェーン(供給網)全体での対応を加速させる。
改定案では、行動計画の目的について、社会全体の人権保護の促進とともに「日本企業の国際競争力と持続可能性を確保、向上させる」と定めた。現行計画(2020~2025)の期間に、大企業を中心に人権尊重の姿勢を内外に示す「人権方針」策定が進んだことを踏まえ、先行事例の共有や相談体制の拡充などを通じ企業規模を超えて実効性ある体制をつくることに重心を置いた。
また、「誰一人取り残さない」ための施策として、ジェンダー平等や、外国人労働者、障害者、子ども、高齢者の人権の保護に向けて引き続き取り組む姿勢も強調。生成AI(人工知能)の急速な普及などを踏まえ、テーマ別課題として「AI・テクノロジーと人権」を掲げ、プライバシー侵害や誤情報の流布といった人権侵害を防ぐための国際ルール形成に力を入れる方針を示した。
政府は20年に国連の指導原則を踏まえて5年間の行動計画を策定。この間、欧州連合(EU)では、域内で事業を行う企業に取引先を含む広範な人権DDの実施や情報開示を義務付ける法整備が進んでいる。このため日本企業は適切に対応しなければ取引を中止される恐れも出ている。経団連は9月、企業の取り組みを後押しするための官民による体制整備などの重要性を政府に訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕首相官邸=東京都千代田区
2025年10月06日 08時43分