「字幕メガネ」で映画観賞を=聴覚障害者をサポート―NPOが普及活動・東京



映画観賞時、レンズ上に字幕が映し出される「字幕メガネ」が注目を集めている。情景や効果音も文字で表現するため、耳が不自由な人でも映画を楽しめるツールだ。字幕を制作し、メガネの普及に取り組むNPO法人「メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)」(東京都渋谷区)の担当者は「誰もが映画を楽しめるきっかけになれば」と期待する。

利用者はスマートフォンの専用アプリを使い、対応する作品の字幕データをダウンロードした上で、メガネと接続する。付属の小型マイクが映画の音声に反応して、対応する場面の字幕がレンズに映し出される仕組みだ。

MASCは普及のため、2020年1月から全国の映画館に字幕メガネを貸し出す事業を開始。現在、国内85カ所の映画館で使われている。利用者からは「家族そろって映画を楽しめた」「映画の描写を最後まで理解できてうれしい」といった意見が寄せられているといい、事務局長の川野浩二さん(59)は「利用者のニーズに応えられている」と自信を深めている。

川野さんによると、こうした「バリアフリー字幕」は劇中の細かな効果音や情景も字幕化するため、2時間ほどの映画で約2週間の制作期間が必要。本編を文字起こしした上で、必要な字数や表現を考え、何度も推敲(すいこう)を重ねるという。「映画を楽しんでもらうにはどのような字幕にすべきなのか、字幕が単なる説明文になっていないか常に考えている」と苦労を打ち明ける。

MASCによると、20年12月~21年11月に制作された国内映画490本のうち、バリアフリー字幕に対応した映画は80本(16.3%)にとどまる。文化庁は、映画制作会社がバリアフリー字幕を作るのに最大100万円を助成する制度を設けているが、川野さんは「コストが掛かるため、字幕入り映画は大手の会社が制作したものが多い。より多くの映画関係者が恩恵を受ける制度ができれば」と、さらなる支援拡充に期待している。

【時事通信社】 〔写真説明〕映画の音声に反応し、レンズ上に字幕を表示するメガネ=8日、東京都渋谷区 〔写真説明〕BGMも文字として表現するバリアフリー字幕(NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター提供)

2022年06月10日 08時40分


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