自民党の高市早苗新総裁は、首相に選ばれた場合、直ちに物価高を踏まえた経済対策を検討し、裏付けとなる2025年度補正予算案を臨時国会に提出する考えを示している。衆参両院で与党が過半数を割る中、野党の協力をどう取り付けるかが最大の課題だ。「政治とカネ」の問題を受けた党改革に関しては、今後の人事で派閥裏金事件の関係議員を処遇するかが当面の焦点となる。
高市氏は、総裁選公約で「責任ある積極財政」を掲げた。ガソリン税と軽油引取税の暫定税率を廃止すると表明。所得税の課税最低ライン「年収の壁」の引き上げなど「働く意欲を阻害しない制度」の整備を打ち出した。
所得に応じて給付や減税を行う「給付付き税額控除」導入も、高市氏がかねて言及してきた政策だ。
給付より減税を重視し、国民の「手取り増」を目指す姿勢は、野党各党の主張と重なる。少数与党の現状を踏まえ、今後の国会運営で協力を得る狙いがあるのは明らかだが、思惑通りに進むかは見通せない。
財源論もハードルとなりそうだ。高市氏は税収増の活用などを訴えつつ、赤字国債の増発も「やむを得ない」との立場だ。自民党内には「物価高対策の実施には財政規律の観点から恒久財源が必要だ」との声も根強く、指導力が早速問われることになる。
一方、昨年の衆院選と今年の参院選で当選した「裏金議員」を巡り、党内には「みそぎが済んだ」として要職起用を容認する空気がある。高市氏も4日の記者会見で「しっかり働いてもらう」と同調。自身を支援する議員に、裏金事件の発端となった旧安倍派が多いことも背景にある。
とはいえ、「政治とカネ」の問題に対する世論の視線はなお厳しい。最初の関門となる党幹部人事について、高市氏は党内融和も意識しつつ、慎重に判断するとみられる。
石破茂首相が在任中の公表に意欲を示す戦後80年「見解」の行方にも影響を与えそうだ。高市氏は、安倍晋三元首相の戦後70年談話を「実に未来志向だ」と評価し、石破氏の見解公表に反対する考えを示している。
2025年10月05日 07時00分
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