小池知事参戦、波立つ与野党=自民迷走、9候補が乱立―衆院東京15区補選ルポ



小選挙区選出議員が2代続けて逮捕される異例の事態となった衆院東京15区。自民党の地元組織が壊滅的な打撃を受けた間隙(かんげき)を縫うように東京都知事の小池百合子が補欠選挙に参戦した。自民は迷走し、宙に浮く保守票を狙って候補が乱立。野党共闘にも余波は及ぶ。(敬称略)

◇インクルーシブ

「日本をここから変える」。告示日の16日、自身が擁立を主導した作家乙武洋匡の応援に駆け付けた小池は、JR亀戸駅前でこう訴えた。遊説で触れるのは駅前のバリアフリー化やマンション防災など都政の課題や実績が中心だ。

小池は7月に2期目の任期が満了する。態度を明確にしていないが、3選出馬を予想する向きが多い。来夏には都議選も控える。演説にはこれらに向けた思惑が透ける。

小池系の「ファーストの会」が乙武擁立(無所属で出馬)を決めた際、小池は「インクルーシブ(包摂的)社会を体現する人物だ」と理由を説明した。乙武は先天性四肢欠損症で知られる。姿を聴衆が見やすいように街宣車は演台を高くした。そこから「誰一人取り残さない社会」を訴える。

自民は候補を立てられず、公明党は「包摂社会」に共鳴する―。当初、小池は自公との共闘を描いた。

だが、自民の裏金事件への批判は収まらず、相乗りは得策でないとの判断に傾いたもよう。公明は過去の女性問題を引きずる乙武について「うちは推せない」と支援に難色を示した。結局、小池と歩調をそろえたのは国民民主党だけになった。

◇江東御三家

自民も目算が狂った。まず独自候補擁立を断念。それでも「勝ち組」入りを狙い、乙武に推薦を出す方向で都連が調整を進めた。最終的に推薦依頼が来ず、はしごを外される形で12日に不戦敗が確定。党本部は「推薦を見送ることと致しました」とする1枚紙の談話を出しただけだった。

江東区全域と重なる東京15区は自民にいわく付きの選挙区だ。柿沢、木村、山崎の保守系「御三家」が長年しのぎを削ってきた。昨春の区長選は自民衆院議員だった柿沢未途が支援に回った木村弥生が当選。自民元都議の山崎一輝が敗れた。

この選挙を巡る公選法違反(買収など)事件で柿沢は逮捕され議員辞職。木村も区長を辞職した。

柿沢の前に自民の地元選出議員だった秋元司はカジノを含む統合型リゾート(IR)事業汚職で逮捕され、前回衆院選は不出馬となった。「政治とカネ」の不祥事が続き、補選は事実上の自主投票がなし崩し的に決定。党江東総支部の事務所に補選関連の人の出入りはない。関係者は「当面は候補を立てられないだろう」とため息をもらす。

◇立・国分断

「野党を少しでも強くし、政権を代えなければならない」。18日に江東区の商店街でマイクを握った立民新人の酒井菜摘はこう訴えた。政権批判票の受け皿になるため、立民と共産は候補を一本化。16日の街頭演説では立民参院議員の蓮舫、共産委員長の田村智子に加え、れいわ新選組共同代表の櫛渕万里、社民党党首の福島瑞穂が並び、存在感をアピールした。

ただ、連合会長の芳野友子は立・共のタッグについて「容認できない」と明言し、連合東京は自主投票を決めた。連合が求めるのは、ともに旧民主党を源流とする立民と国民民主の共闘だ。しかし、小池の参入もあって股裂きは続く。

立民に野党第1党争いを仕掛けた日本維新の会は新人の金沢結衣を擁立。18日の街頭演説で金沢は「裏金まみれの政治を刷新したい」と訴えた。代表の馬場伸幸も遊説を重ねており、政治改革に関し、「一番高めの球を投げて満足している」として立民批判を展開した。

参政党や日本保守党といった保守系の政党・政治団体も加わり、計9人による争いとなった。

【時事通信社】 〔写真説明〕街頭演説に耳を傾ける人たち=20日午後、東京都江東区

2024年04月21日 07時11分


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