「2人の帰り待っていたい」=死亡認定申請も葛藤続く―元妻と息子不明の男性・知床事故2年



北海道・知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU

I(カズワン)」が沈没した事故は23日で発生から2年を迎える。元妻=当時(42)=と息子=同(7)=が現在も行方不明の道内の男性(51)は今年、運航会社などを相手取った訴訟に参加するため、息子の死亡認定申請を行った。法律上は遺族になったが、「2人の帰りを待っていたい」との思いは変わらない。

2022年4月23日、元妻と息子は知床を旅行していた。元妻は観光船に乗る直前まで男性とSNSで連絡を取り合い、最後に送られてきたのは港でピースサインをする息子の写真だった。ニュースで事故を知った男性は、乗客名簿に2人の名前があると運航会社から聞くと、知床に向かった。

海上保安庁やボランティアの捜索により、同年10月までに乗客乗員20人の死亡が確認された。しかし、元妻と息子は見つからず、帰りを待つ日々が続いた。

昨年11月、裁判に参加するには死亡認定が必要と弁護士から言われた。悩んでいると、息子が天国に行く夢を見た。「他の子どもたちと一緒にいて、笑顔でたくさん話をしてくれた。夢の中でも泣いたが、起きてからも涙が止まらなかった」と打ち明ける。

「裁判に参加し、運航会社社長が本当に反省しているのか直接聞きたい」。苦しみながらも決断し、今年2月に役所で死亡認定を申請した。書類に息子の名前を書き込む際には涙が出たが、3月、申請は受理された。

「生存の可能性が厳しいことは分かっている。けれど、やっぱり『さよなら』とは言えない」と男性。「申請は通ったが、まだ2人の帰りを待っていたい」と語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕知床観光船事故で行方不明となっている息子の学習机に座る男性=3月11日、北海道

2024年04月21日 19時03分


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