迷走6カ月、ようやく可決=ウクライナ支援で米下院



【ワシントン時事】約6カ月に及んだ迷走の末、米下院はウクライナ支援関連法案を可決した。ウクライナ支援に難色を示すトランプ前大統領に近い共和党の保守強硬派に振り回されてきたが、最終的には民主、共和両党の多数派が押し切った格好だ。

「今が決断を下す重要な瞬間であり、機会だった。時宜にかなっていると思う」。ジョンソン下院議長(共和党)は20日の法案可決後、記者団に強弁した。昨年10月の議長就任以降、バイデン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領を含む各国首脳らから再三促されても採決を先送りしてきたが、ようやく行動に移した。

支援法案はジョンソン氏の定まらない対応に左右された。バイデン氏が予算編成権を持つ議会に追加資金を要求したのは昨年10月。ウクライナ情勢の悪化に加え、イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスが衝突し、インド太平洋で中国が圧力を強める中、対外支援の追加資金を盛り込んだ法案の成立は急務との認識が民主、共和両党の大半では広がっていた。

しかし、共和党は下院で過半数を握るものの、わずかな優位しかなく、ジョンソン氏は造反を恐れて一部の保守強硬派への配慮を優先した。当初は「対メキシコ国境を越えて流入する移民の対策が先だ」と主張し、採決を拒否。数カ月に及ぶ協議の末、今年2月に上院の民主、共和両党が移民対策で合意し、ウクライナ支援などとセットで法案にすると、今度はその内容にも注文を付けた。

移民対策を除外した対外支援だけの法案が上院で可決されても、対応を決めかねてきた。ジョンソン氏が採決に踏み切ったのは、今月13~14日にイランがイスラエルを直接攻撃し、早期可決を求める声が党内でも強まったのがきっかけ。ただ、共和党内の穏健派が民主党と連携し、ジョンソン氏を迂回(うかい)して法案採決を強行する動きを強めたことも背景にあった。

法案は圧倒的多数の賛成で可決され、議場では賛成派の議員らがウクライナの旗を振って歓声を上げた。はしごを外された保守強硬派は「報復」として議長解任に向けて動きだしたが、実際に解任されるかは民主党の動向次第。ジョンソン氏は「私は正しいと信じることをした」と開き直った。

【時事通信社】 〔写真説明〕ジョンソン米下院議長(左)の記者対応を聞くトランプ前大統領=12日、南部フロリダ州パームビーチのトランプ氏私邸「マールアラーゴ」(AFP時事)

2024年04月22日 18時05分


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