首都圏で相次ぎ発生した強盗事件で、警察当局は匿名・流動型犯罪グループが関与したとみて、指示役の特定を急いでいる。鍵を握るのが携帯電話の解析だ。指示役は自らに捜査が及ばないよう、秘匿性の高いアプリを使い、闇バイトで集めた若者らに実行役や見張り役といった役割を分担させている。捜査幹部は「必ず穴はある。多くの携帯電話を押収し、解析でつなげていく」と語気を強める。
警視庁と埼玉、千葉、神奈川各県警は9日付で共同捜査本部を設置した。4都県で起きた7件の強盗事件について、関連があるとみて調べている。
7件は8月末~10月頭に発生。高齢者宅や質店などに凶器を持った複数の男が押し入り、暴行を加えた上、金品を奪うなどして逃走した。さいたま市西区と所沢市、国分寺市の事件は、被害者が粘着テープで縛られるなど手口が似ている。
所沢市の事件では、埼玉県警が強盗致傷容疑などで、実行役とされる自称アルバイト佐藤聖峻(25)、職業不詳、森田梨公哉(24)両容疑者ら4人を逮捕した。両容疑者は国分寺市の事件への関与もほのめかしている。
会社員轟祐二容疑者(24)も厚木市と八千代市の事件に関与したとして、神奈川、千葉両県警に逮捕されるなど、1人の容疑者が複数の事件に関わった疑いがある事案も目立つ。
共同捜査本部によると、指示役は秘匿性の高いアプリ「シグナル」の複数のアカウントで実行役らとやりとりしていた。これまでに埼玉県内の2件と国分寺市の事件、神奈川県内の2件と埼玉県内の事件で、それぞれ、指示役の一部のアカウント名が同じだったことが判明している。
一連の事件では実行役のほか、見張りや強奪品の処分、仲間の搬送などを担ったとされる者を含め計約25人が逮捕された。その多くがSNSで闇バイトに応募したが、報酬は受け取っていないという。「ホワイト案件」「ドライバーの仕事」などのうたい文句だったのに、脅されて強盗に加担させられたり、報酬を受け取りに行った先で別の強盗を指示されたりしたケースもあった。
警視庁は関連する容疑者の携帯電話を集めて解析を急いでおり、ある捜査幹部は「下っ端を捕まえるだけでは意味がない。携帯を一つ一つ調べ、突き上げないといけない」と語る。一方、別の幹部は「闇バイトで脅されても、殺されることはない。警察や周囲に相談してほしい」と話した。
【時事通信社】
2024年10月14日 07時07分
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