自民非公認、失った金看板=「裏金」候補、保守派が支え―衆院東京24区ルポ・「みそぎは済むのか」(3)・完【24衆院選】



自民党派閥の裏金事件に絡んで公認を得られず、無所属で衆院選に立った10人は批判を浴びながら孤独な戦いを進める。代表格が東京24区の元政調会長萩生田光一。自民党という「金看板」を失い、公明党の支援も計算できない中、「みそぎ」に向けて支えとするのは自身が築いた組織と保守派の勝手連だ。野党は議席奪取の好機とみて攻勢を強める。(敬称略)

◇消えた為書

「今はぐっと我慢し、この処分に対して結果を出すことで皆さんの信頼を得ていきたい」。公示を前にした12日、東京都下の八王子市内。萩生田は選対事務所の開所式でこう力を込め、陣営幹部らに深々と頭を下げた。

本来なら自民総裁の石破茂から贈られるはずの「為書(ためがき)」は張られていない。「祈必勝」と大書するポスターのことだ。党四役や閣僚の来援もない。比例代表で復活当選する道もない。選対の風景は前回までと一変した。

「かつてない厳しい選挙だ」「試練を与えられた」。萩生田の前にあいさつした地元の商工会議所会頭や党支部役員は一様に険しい表情を見せた。

◇急転

八王子市議、都議を経て40歳で国政に進出した萩生田は、同じ派閥に属した元首相の森喜朗や安倍晋三に胆力や調整力を見込まれ、出世の階段を上った。安倍は「派の後継会長候補」とみていた。

その安倍が2022年7月に急死した頃から風向きが変わった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係がまず問題となった。裏金事件では2728万円の政治資金収支報告書不記載が明らかになり、党の役職停止1年の処分を受けた。

今年7月、八王子の都議補選で自民候補が大差で敗れた。後援会幹部は「あの時から本人はピリピリしている」と明かす。

東京24区で公明の組織票は「4万程度」(地元都議)。一部の非公認候補には出た推薦が、萩生田には出なかった。「統一教会」と「裏金」のダブルで問題を抱え、全国的な注目が集まる事情が影響したようだ。公明幹部は「今さら推薦する時間はない」と突き放す。4万票の行方は見えない。

◇最重点区

「信じて良かった、と言われるように国会に戻れば働いて働いて働く」。17日、JR八王子駅前で街宣車に上った萩生田は、「裏金!」とヤジが飛ぶ中、いかに地元に貢献したか力説した上でこう声を張り上げた。

隣に立ったのは前経済安全保障担当相の高市早苗。共通項は「保守派の安倍門下生」だ。閣外に出たため、非公認候補の支援も黙認されている。「ブルドーザーのように働き、着実に実績を出した」と支持を呼び掛けた。

萩生田の選対事務所には安倍の遺影が置かれている。安倍夫人の昭恵やジャーナリスト櫻井よしこも駆け付けた。18日の決起大会には都知事小池百合子がビデオメッセージを寄せ、出席者によると「都政のために応援する」と表明した。

立憲民主党は、萩生田の対抗馬に元参院議員の有田芳生を擁立した。ジャーナリストとして統一教会問題を追及してきたことで知られる。「不公正な政治を八王子から変えていこう」と訴える。

代表の野田佳彦は15日の第一声をJR八王子駅前で上げた。カメラの向こうを意識し、「裏金議員を裏で支えた旧統一教会」と強調した。党最高顧問の枝野幸男もてこ入れした。最重点区として総出で当たる。

日本維新の会の佐藤由美、国民民主党の浦川祐輔、参政党の與倉さゆりら4新人も立候補した。野党乱立を自民関係者は「うちに有利に働く」と期待を込めてみている。



◇衆院東京24区立候補者

與倉さゆり

40

会社員











有田

芳生

72

元参院議員







畑尻

文夫

69

元学習塾経営





浦川

祐輔

31

弁護士











佐藤

由美

52

元都議











萩生田光一

61

元経産相







前(6) (注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日(27日)時点、丸数字は当選回数。参=参政党、立=立憲民主党、無=無所属、国=国民民主党、維=日本維新の会。

【時事通信社】 〔写真説明〕東京24区の候補者演説を待つ聴衆ら=17日、東京都八王子市

2024年10月20日 06時55分


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