崩れた共闘、消える共産票=立民幹事長、崖っぷちの戦い―衆院香川1区ルポ【注目区を行く】



野党共闘が大きく後退した今回の衆院選。香川1区で自民党の閣僚経験者としのぎを削る立憲民主党の小川淳也は、共産党の組織票を失い、無党派の政権批判票を共産と争う構図となった。幹事長として全国を飛び回る中、崖っぷちの戦いが続く。(敬称略)

◇録音

「政治改革の断行へ全力で頑張ります」。19日昼前、高松市の中心街に止まった街宣車のスピーカーから小川の声が響いた。だが、そこに本人の姿はない。流れたのは前夜に録音した演説だ。

幹事長に起用され、メディアへの露出は増えた。一方で、録音が相手では立ち止まって聞く人も少ない。本人不在の選挙は初。動き出した街宣車の後を妻の明子らが自転車で追い、街を行き交う有権者に支持を求めた。

公示から6日目の20日、小川はようやく高松に入り、自身の集会に参加。涙声で「次世代に胸を張れる政治と社会をつくろう」と訴えた。浮動票を意識し、数日前から一般向けに告知していた会だ。ただ、地元活動はこれが最後の予定。1時間弱滞在し、慌ただしく隣の愛媛県へ向かった。

2005年に初当選し、6回連続で議員バッジを着けてきたが、小選挙区を制したのは前回21年を含めて2度しかない。今度は党を率いる立場。「選挙区で勝てなければ、幹事長を即辞任する」と周囲に語った。

◇奇縁

小川と共産の関係は悪くなかった。16年の参院選を前に共闘の「確認書」にサイン。以後、2回続けて共産は香川1区に独自候補を出さなかった。これも前回の小選挙区勝利の要因となった。

一転して共産が新人田辺健一の擁立を発表したのは9月10日。安全保障政策などを巡り、共闘の土台が崩れたと判断したためだ。皮肉にも田辺は16年参院選の野党統一候補。小川も推した側に立っていた。

この10年ほど、国政選挙や県議選で共産が香川1区の区域内で出した票はおよそ1万。ギリギリの戦いを重ねた小川には無視できない数字だ。「今回は一緒にやれない」。共産県委員長の中谷浩一がこう伝えると、小川は「仕方ない」と応じた。これ以降、二人は連絡を取っていない。

18日、高松市の百貨店前で田辺は自民裏金事件に触れ、「共産が伸びれば政治は必ず変わる」と語り掛けた。ここは21年前、初めて衆院選に挑戦した小川が街頭で最初にマイクを握った場所だ。

◇名門

小川とずっとライバルだったのが自民の元デジタル相平井卓也。国会議員3世、県内シェア約6割の地元紙の社主一族だ。

基本戦略は組織固め。各種団体や企業をこまめに回り、朝礼の機会などに投票を呼び掛ける。

市内の農協支店の会議室を借りて開いた18日の集会は、そろいの作業着姿の一行ら約160人でごった返した。「最後の選挙のつもりで戦います」。平井もまた、退路を断つ覚悟を強調する。

懸念は裏金事件を受けたイメージ低下。旧岸田派の平井も政治資金収支報告書に不記載があったとして告発された経緯がある。危機感は広がっており、前首相の岸田文雄が19日に高松入り。「発想力と情熱を持った政治家だ」と持ち上げた。

香川1区には日本維新の会の町川順子、参政党の小林直美の両新人も立候補している。



◇衆院香川1区立候補者

小林

直美

50

作家













田辺

健一

43

党県常任委員





小川

淳也

53

党幹事長







前(6)

平井

卓也

66

元デジタル相



前(8)

































推(公)

町川

順子

65

元議員秘書





新 (注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日(27日)時点、丸数字は当選回数、「推」は推薦。参=参政党、共=共産党、立=立憲民主党、自=自民党、公=公明党、維=日本維新の会。

【時事通信社】 〔写真説明〕衆院選香川1区のポスター掲示板=19日、高松市

2024年10月22日 07時02分


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