政府は、中国による水産物禁輸措置の影響を受けているホタテ貝の輸出を後押しするため、ベトナムで加工した後に米国へ輸出するルートの開拓に乗り出す。近くベトナムの加工施設の視察団に参加する事業者を募り、来年1月にも現地に派遣。中国への依存度が高かったホタテの輸出先を多角化し、国内水産業への打撃を和らげる狙いだ。
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受け、中国は8月に日本産水産物の全面輸入停止に踏み切り、9月の中国向けホタテ輸出額はゼロになった。中国の施設で殻むきした後に米国へ輸出されていたホタテは、原貝換算で年約3万~4万トンと推計されており、米国へ輸出する前の加工処理を行う代替施設の開拓が急務となっている。
ベトナムでは、在日米国大使館から紹介を受けた19施設を中心に視察先を選定し、商談につなげたい考えだ。宮下一郎農林水産相は1日、エマニュエル駐日米大使と農水省で会談し、協力への謝意を伝えた。大使は「(中国の措置は)公衆衛生や安全性の問題ではなく、経済的威圧だ。日本と米国は友人だ」と応じた。
宮下氏は1日の閣議後記者会見で「輸出先の多角化と国内の消費拡大で(中国などによる)輸入規制のダメージを乗り越えつつある」との認識を示した。農水省が5日に正式公表する10月の農林水産物・食品の輸出額では、米国への冷凍殻むきホタテの輸出額が前年同月比1割増の14億円となるなど、ホタテ輸出に回復の兆しがあるという。
【時事通信社】
〔写真説明〕エマニュエル駐日米大使(左端)と談笑する宮下一郎農林水産相(右手前)=1日午前、東京・霞が関の農水省
2023年12月01日 16時46分