脅威増すサイバー犯罪=身代金型「復旧まで数カ月」―万博見据え、組織底上げ・大阪府警



医療機関や企業を狙ったコンピューターウイルスによる攻撃などサイバー空間での脅威が増す中、大阪府警が組織を挙げて対策に乗り出している。2025年に大阪・関西万博の開催を控えるが、高度な専門知識や技術を持つ人材の獲得競争は激化。府警幹部は「捜査員の養成は急務だ」と危機感を募らせる。

昨年10月31日、大阪急性期・総合医療センター(大阪市)は朝から大混乱に陥った。担当者は「午前8時ごろ電子カルテシステムが稼働せず、千人規模いた外来患者に拡声器で状況を説明したり、一人ひとり呼び掛けたりして、いったん帰ってもらった」と振り返る。外来診療や救急患者の受け入れは停止。紙のカルテに切り替えたが、作業効率は半減し、渡す直前に気付いたものの、処方薬と異なる薬を用意するミスも起きた。

原因は身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」による攻撃だ。パスワードの使い回しやウイルス対策ソフトの未導入などセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性を突かれ、混乱は約2カ月続いた。

府警サイバー犯罪捜査官の福山剛志警部(51)は「以前なら感染しても復旧まで1、2日だったのが、3、4カ月かかるようになった」と明かす。府警によると、昨年のランサムウエアによる府内の被害は前年比6件増の27件と、過去3年間で最悪となった。

深刻なサイバー犯罪が相次ぐ事態に、府警は昨年、対策の司令塔となる「高度情報推進局」を新設。局内に人材育成や捜査支援を担う「サイバーセキュリティ対策課」などを置いた。現在12人いるサイバー犯罪捜査官も増員する計画で、今夏に来年度採用者の募集を始めた。

福山警部も民間企業でシステム開発に携わった後、コンピューター犯罪の捜査に関わりたいと志し、1999年に採用された経歴を持つ。民間との獲得競争は激しさを増すが、福山警部は「大阪の企業や府民を守ることができるのが醍醐味(だいごみ)だ」とやりがいを語った。

〔写真説明〕取材に応じる大阪府警サイバー犯罪捜査官の福山剛志警部=8月8日、大阪市中央区

2023年09月18日 14時41分


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