日本の伝統的な芸術作品でもある盆栽。いざ目の前にしてみると「立派だなあ」とは思っても、どういった点が凄いのかがよく分からないという方は多いかと思います。
昔から多くの方が趣味としている盆栽ですが、その魅力はどこにあるのでしょうか? 近年では外国でも盆栽の芸術性の高さが評価され初めています。そんな盆栽の楽しみ方についてご紹介します。
盆栽とは
まず、盆栽とは何なのかを説明します。
盆栽の「盆」は鉢のこと。盆栽の「栽」は鉢で生きる木のことを指しています。
小さな鉢などに木を植え、その植物の自然な姿を壊さないよう手をかけてやる。大自然の趣をミニチュア化して再現する芸術品と呼べるでしょう。
小さな鉢の中で四季の移り変わりや壮大な自然、長い時間の移ろいを好きに表現出来るのが盆栽の魅力です。植物の成長を楽しむので時間のかかる趣味ではありますが、自分の思ったとおりに植物を仕立てることが出来た際の喜びはとても大きいです。
ガーデニングとは庭作りとも言えるでしょう。単に1つの植物を育てるのではなく、庭全体をどうデザインするかという意味合いも含まれています。植物をいかに美しく育てるかに拘るよりは 庭全体をどれだけ美しく見せるかという点がポイントになります。
一方で盆栽は、鉢の中の空間をいかに美しく見せることができるかに気を配ります。 植木のみではなく、鉢や苔、土などとともに鉢の上に芸術作品として作り上げていくのが盆栽。 自然の魅力を凝縮して表現するものであり、単純に小さな鉢に木を植えただけのものでは無いということを覚えておきましょう。
盆栽を鑑賞する際のポイント
盆栽を鑑賞する際に注目するのは根・幹・枝の付き具合・葉です。
根
まず見ておきたいのは根。根の張り具合(根張り)では年月を感じることができます。年を経るごとに根が盛り上がり、土をしっかりとつかむようになります。
幹
次は幹。幹の表面は当然ながら木の種類によって異なります。中でも特に魅力的なのが松の盆栽です。 幾層にも折重なった幹肌の様子からは長い年月を感じることが出来ると言われています。
また幹を下から覗きあげてみた時に天へと太く伸びる、大木のような迫力を感じることができたなら、それは良い盆栽の証と言えるでしょう。
枝
盆栽の枝はとても繊細です。枝の1本1本がどれも必要なものであり、無駄なものは1本たりとも存在しません。良い盆栽とされるものは全体のバランスを壊してしまうような不必要な枝がなく、大きな枝が良いバランスで配されているもの。葉が落ちた冬は、 枝ぶりがより魅力的に見えるでしょう。
葉
葉は季節によって大きく表情を変えます。例えば紅葉などは秋には美しく紅葉し、冬には葉を落として美しい枝ぶりをよく見せてくれます。
葉が季節によって枯れていく様も、自然を表現する上では欠かせないものなのです。
樹形の種類について
盆栽は樹の姿を楽しむものです。その樹形には様々な種類がありますが、どれも自然に作られる形を元としています。
共通して言えるのはそれぞれの樹の特徴を活かし、その植物にあった姿に作ること。基本的な樹形についていくつかご紹介します。
直幹 (ちょっかん)
盆栽の基本的な形の一つです。樹が根本から枝先までまっすぐに立って伸びている姿のもの。幹は空に向かってまっすぐ立ち、枝は前後左右にバランスよく振り出す八方根張りであることが特徴です。
一見単調ではありますが、シンプルなのでごまかしがきかない樹形です。スギやヒノキが向いています。
模様木(もようぎ)
幹が曲がりを持ちながら柔らかな曲線を描くものを指します。幹が曲線を描くことを「模様」と呼ぶことから名前が付きました。自然に生えている木のほとんどがこの樹形になり、ゴヨウマツや紅葉などが適しています。
直幹と同じく盆栽の基本的な形の一つです。
懸崖 (けんがい)
幹が鉢の縁から下方向へ大きく下がっているものを指します。 断崖絶壁の場所や海岸に自生している力強い様子を表しています。バランスの取りにくい樹形であるため、倒れている反対側の根張りを強くするなどの配慮が必要です。ゴヨウマツ、紅葉などが適しています。
斜幹 (しゃかん)
樹が左右どちらかに傾いた形のものを指します。強風などの影響や日陰で育ったことにより太陽に向かって曲がって生育した木樹を表現しています。懸崖と同じく、傾いているのとは反対方向にある根張りで安定感を出すことがポイントです。松やスギなどが向いています。
吹き流し
強い風の中で生き残ろうとする自然の強さを表現している樹形です。
すべての枝が同じ方向を向くようにすることで、風が一方向から常に吹いている様を表しています。見ていると風を感じるような樹形と言えます。
奥が深い盆栽
「盆栽はよく分からないもの」という意識が少しでも薄れたでしょうか?いつの時代でも人気のある趣味として君臨している盆栽。その理由は奥の深さにあると思います。
また、盆栽の手入れは重たい土をたくさん運んだり、大量の肥料を用意するといった重労働は必要ありません。軽作業で手入れなどが出来るので、体力の衰えてきたシニア世代でも楽しく続けることが出来るのも魅力の1つなのではないでしょうか?
最近では小ぶりな盆栽であればネットショップからも購入が可能です。1つの鉢に愛情をたくさん注いであげる楽しみをぜひ体験してみてくださいね。