新元号の令和が始まりました。この令和という言葉の出典は万葉集であるということは様々なところで紹介されているので皆さんご存知かと思います。
ここで改めて注目したいのが万葉集について。その美しい言葉たちの魅力を再発見してみませんか?
新元号「令和」の意味
令和の意味について再度確認してみましょう。
春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように
一人ひとりが明日への希望とともに、
それぞれの花を大きく咲かせることができる、
そうした日本でありたいとの願いを込め、決定した。
日経新聞(2019年4月2日号)より引用
万葉集の”梅花の歌”から採用された令和。その梅花の歌の本文は以下のようになります。
初春の令月にして、気淑(よ)く風和ぎ、
梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かをら)す。
万葉集より「梅花の歌」
「令」と「和」という文字が含まれていますね。
令月というのは何をするのにも良い月という意味があります。
この歌の現代語訳は「初春の好い月にして、気持ちのいい風が和らかだ。梅は鏡前の粉を披くように開き、蘭はお香のように薫っている」となります。
なんとも綺麗な歌ですね。万葉集は古典だからいまいち理解できなさそうと思ってしまうかもしれませんが、実はそんなことはありません。現代訳を読んで見ると「こんなに面白いものだったのか」と発見できるかもしれませんね。
そもそも、万葉集とは
万葉集とは 7世紀後半から8世紀後半(奈良時代)に編纂された日本で最古の歌集です。全20巻で構成されており、その中には4500首の歌が収められています。編纂や成立の詳しい経緯は不明となっていますが、最終的に20巻にまとめたのは大伴家持によってではないかとされています。
万葉集の大きな特徴
万葉集の特徴は天皇や皇族、貴族や官人などの身分や教養のある階級の人たちの歌に限らず、名もなき庶民の歌も多く収められている点だと言えます。
その内容は主に次のように分類されます。
・相聞歌(そうもんか)・・多くは男女の恋の歌。お互いの消息を交わし合う目的で親子や兄弟姉妹・友人など親しい間柄でやり取りされた歌も含まれます
・挽歌(ばんか)・・人の死に関する歌
自然の偉大さ、家族や男女の愛情、亡くした人への思いをうたった歌が大半を占めており、まさに「人の一生に関するほとんどの場面が歌われた歌集」と言うことができます。
万葉集の中でも特によく知られているのが、「防人(さきもり)の歌」でしょう。 独り都を離れ、単身赴任で九州防衛にあたった兵士たちの故郷や家族、恋人を思って歌われた歌は今でも心に響くものばかりです。
歌集というと天皇や貴族など教養のある人が技工を凝らして作った難しいものと考えてしまいそうですが、防人や農民を始めとした庶民の歌は分かりやすいものが多いです。
雅な歌を楽しむだけの物ではなく、その時代を生きた人々の暮らしや思いをありありと表現した歌集。それが万葉集なのです。
意味を理解しようとしなくて良い
いくら万葉集が分かりやすいとは言え、原文だけをさっと読んで理解するのは難しいかもしれません。そこでおすすめしたいのが声に出して読んでみること。目で文字を追っていくだけよりも声に出しながら読んでいくほうが感覚的に歌を味わうことが出来ます。
日本語の美しい響きがより強く感じるためにも、声に出して1文字1文字を大事に読んでいくことが大事です。
意味が分からない単語があれば現代訳を併せて読めばいいだけのこと。訳だけでなくイラスト付きの美しい書籍も多く発売されていますので、思わず開きたくなってしまうようなお気に入りの本を探してみると良いですね。
おすすめの書籍
万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
万葉集の歌を全て読むのは大変なことです。これは全ての歌の中から名歌約一四〇首を厳選して収録した1冊。 解説が分かりやすく、あまり和歌に触れたことのない初心者の方でも読みやすいと評判です。
万葉の秀歌
一句ごとに丁寧な解説が添えられており、少しずつ読み進めていきたいという方におすすめの本。万葉集の世界をあじわうことが出来ると評判です。
まとめ
美しい景色を見た時、素敵な体験をした時など、現代の私達もSNSなどを使ってその気持を表現したりしますよね?
万葉集はそれと同じように、思いがコンパクトに書かれたつぶやきだと考えると敷居が低くなるかもしれませんね。
万葉集を読むことで遠い時代の人々の気持ちがぐっと身近に感じられるはず。
注目が集まっている万葉集にこの機会に触れてみるのはいかがでしょうか?