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欧州、脱原発でせめぎ合い=気候変動で再評価も―福島第1原発事故から10年



【ベルリン時事】東京電力福島第1原発事故は、環境問題に敏感な欧州で原発をめぐる世論に大きな影響を与え、ドイツなどの脱原発につながった。一方で、事故後の10年間で気候変動への警戒が劇的に高まり、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を再評価する声も増大。欧州は原発の長期的な存続をめぐり、せめぎ合いの状態となっている。

「ここ数年で、原発の環境面の利点が注目され始めた」。スウェーデンの中道右派野党で、原発を支持する穏健党のエネルギー政策広報責任者、ヤルメレット議員はこう話す。電力のうち水力と原発がそれぞれ4割を占める同国は、2040年までに再生エネ電力100%を目指す一方、脱原発の期限は設けない玉虫色の方針を取っている。

背景には、再生エネへの期待が大きい一方、原発支持も根強いことがある。昨年11月の世論調査では、39%が新設も含め原発支持、31%が新設なしでの原発維持を求め、政治主導の脱原発支持は16%にとどまった。スウェーデンの消費者向け電気代は、再生エネへの補助金で高騰したドイツの3分の2程度で、CO2排出量は欧州連合(EU)加盟国で屈指の低さ。ヤルメレット氏は、安定電源の原発と水力など自然エネルギーの「良好な組み合わせ」の成果だと強調する。

EU28カ国(20年離脱の英国含む)の原発発電量は、10年から19年で約9万5000ギガワット時減と約1割減少した。ただ、22年末の脱原発へ着実に歩を進めてきたドイツ分が6万5000ギガワット時と、その大半を占める。全体の発電量が減っているため、原発が全電力に占める割合も4分の1程度でほぼ横ばいとなっている。

欧州ではこのほかベルギーが25年、スペインが35年の脱原発の方針を掲げているが、まだ本格化はしていない。ドイツでは、電気代の高騰やロシア産天然ガスへの依存など脱原発の代償も明らかになっており、周辺国はドイツほど急進的な政策を取っていないのが現状だ。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は昨年10月の訪独時、地元紙に「真剣に脱原発に取り組んでいるのはドイツだけだ」と述べている。

ただ、原発が抱える長期的な課題は解消されていない。最大の問題は、安全基準の引き上げなどによる建設や維持に伴うコスト増だ。

欧州の原発建設のピークは1980年代で、稼働中の原発は老朽化が進む。建設中の原発も英国のヒンクリーポイントC原発など、コストが増大して工期が延びている例が大半だ。

再生エネへの投資が最重視される中、原発への財政支援も減っている。EU欧州委員会が1月に発表した環境政策への最低1兆ユーロ(約129兆円)の投資計画の対象から原発は除外された。

英大学ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のエネルギー政策専門家ポール・ドーフマン氏は、「気候変動は喫緊の課題だ。再生可能エネの弱点だった供給の不安定さも、蓄電技術の向上などで解消され始めている。原発に投資している猶予はない」と述べ、欧州は原発と決別すべきだと強調している。

【時事通信社】 〔写真説明〕フランスの原発=2015年4月、中部サンローランヌアン(AFP時事) 〔写真説明〕ベルギーの原発=2月26日、中部ティアンジュ(EPA時事)

2021年03月06日 14時56分


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