事実婚の関係にある男女とは異なり、同性カップルが健康保険の扶養に入れないといった社会保障などの現行制度に関して、東京23区の区長有志が、同様の権利を得られるよう国に見直しを要望している。一方で、慎重な姿勢を示す区長もおり、同性カップルの権利拡大を巡って見方が分かれている。
同性カップルへの対応を巡り、世田谷、中野両区は11月、都や区の制度に基づき互いをパートナーと宣誓したカップルが望めば、住民票の続柄を、事実婚と同じ表記にする取り組みを始めた。従来の「縁故者」などから、「夫(未届)」「妻(未届)」に変えられる。
ただ、こうした取り組みは社会保障をはじめとした権利拡大に直接つながるものではない。そこで、杉並区の岸本聡子区長は「一義的には同性婚の法制化が必須」と述べた上で、同性カップルを事実婚と同じ扱いにするよう国に求めている。今月23日には、同性パートナーに関する権利や制度などの見直しに向けた検討を促すため、岸本氏ら10区長の連名による要望書が国に提出された。
これに対し、新宿区の吉住健一区長は慎重論を唱える。婚姻関係は本来、法による保護や権利だけでなく、扶養、負債を含めた相続といった義務や責任が生じると指摘。同性カップルに関する制度が「同等のルールになるのか見極めたい」として、動向を注視する。
国レベルではまだ、同性カップルの権利拡大についての議論が十分に深まっているわけではない。足立区の近藤弥生区長は、国への要望に名を連ねることを決めた理由について「それぞれの自治体が少しずつでも当事者に寄り添える形で何ができるか考えた」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕希望した同性カップルに交付される東京都中野区の住民票のサンプル。続柄が「夫(未届)」となっている
2024年12月29日 07時07分