米対外援助機関「解体」の危機=「無駄遣い」とマスク氏が標的―活動見直しで人道状況悪化も



【ワシントン時事】トランプ米政権が、対外援助を行う政府機関の国際開発局(USAID)「解体」に乗り出した。同局の活動が「税金の無駄遣い」と批判され、政府効率化を主導する実業家イーロン・マスク氏の標的にされている。既に多くの援助が一時停止され、各国で人道状況悪化をもたらしかねない状況だ。

「受け取るべきでない人々に資金を与えている。とてつもない不正だ」。トランプ大統領は3日、ホワイトハウスで国際開発局の活動を批判。「不正」の具体的中身には触れなかったが、同局職員を「急進左派だ」と非難した。

1961年制定の対外援助法に基づき設立された国際開発局は、紛争国・途上国でまん延する貧困や感染症に対処する人道支援活動のほか、経済発展のための開発協力を担う。1万人を超える職員を抱え、世界60カ国以上で活動。ロシアの侵攻が続くウクライナ、深刻な人道危機に見舞われているパレスチナ自治区ガザ、アフリカなどが主な活動地域だ。

トランプ氏は1月の2期目就任後、自身の外交政策に沿わない対外援助に支出しないと定めた大統領令に署名。ルビオ国務長官は支出を見直すため、援助を一定期間停止するよう指示した。国際開発局のウェブサイトは閉鎖され、幹部職員約60人が休職扱いになったと伝えられる。

2023会計年度には400億ドル(約6兆2000億円)を超える予算を管理。これにかみついたのがマスク氏だった。今月2日にはX(旧ツイッター)に「USAIDは犯罪組織だ。滅びる時が来た」と投稿し、海外で多様性実現の活動を支援する同局を糾弾。トランプ氏が閉鎖に同意したと主張する。

野党民主党議員は3日、ワシントン市内の国際開発局前で閉鎖に反対の声を上げた。マーフィー上院議員は、貧困対策や開発協力に取り組むことで、テロ組織や中国の影響力拡大に対抗していると指摘。同局の活動で「米国は日々、安全になっている」と訴えた。

国際開発局の局長代行との兼任が発表されたルビオ氏は3日、訪問先の中米エルサルバドルで、支出見直しに職員が協力的でないと批判。「目標は対外援助を国益と一致させることだ」と強調した。米メディアによると、ルビオ氏は同局の一部を国務省に吸収する意向を示している。

【時事通信社】 〔写真説明〕3日、米ワシントン市内の国際開発局(USAID)前で、同局閉鎖に反対する民主党のマーフィー上院議員(中央)ら

2025年02月05日 13時39分


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