【ワシントン時事】トランプ米大統領に近い実業家イーロン・マスク氏の「政府効率化省」関係者が、財務省の決済システムにアクセスした問題で、マスク氏への批判が高まっている。個人情報漏えいなどへの懸念から、「反マスク」の抗議集会が4日、財務省前で行われる事態となった。
「マスクの乗っ取りを阻止しろ」。マスク氏批判のプラカードが多く掲げられた財務省前で、野党民主党議員が「誰もイーロン・マスクを選挙で選んでいない」と訴えると、聴衆から賛同の声が湧き起こった。集会に参加した不動産業のルース・バーグさんは「マスク氏は民主主義の重大な脅威だ」と懸念をあらわにした。
社会保障関連の給付金を含む連邦政府の支払いの約90%が、マスク氏関係者がアクセスした決済システムで行われる。電子メールや住所、銀行口座など大量の個人情報が保管されている。
財務省当局者は4日、この関係者は「特別政府職員」で、「業務の効率性を精査するため、コード化されたデータの閲覧のみ許される」と議員宛ての書簡で説明。他の職員と「同等のセキュリティー義務などの対象になる」と指摘した。
しかし、ワシントン・ポスト紙によると、多くの政府機関の関係者は効率化省の強引な手法が法令違反に当たると懸念しているという。退職者団体や政府職員労組は3日、同省への情報提供停止を求め、ベッセント財務長官を提訴した。
こうした批判に対し、マスク氏はSNSへの投稿で「官僚主義から権力を取り戻すチャンスだ」と反論した。対外援助を行う政府機関の国際開発局(USAID)は同氏の標的にされ、「解体」の危機にある。トランプ氏は4日、記者団に対し、マスク氏を「よくやっている」と持ち上げた。
【時事通信社】
〔写真説明〕米財務省前で行われた実業家イーロン・マスク氏への抗議活動=4日、ワシントン
2025年02月05日 20時31分