〔国際女性デー50年〕キャリア形成、男女偏りなく=意思決定に「女性の視点」を―自治体の管理職、残る課題



政府は、管理職など「指導的地位」に占める女性の割合を30%程度とする目標を掲げる。地方自治体でも女性の管理職が増えつつあるが、川崎市職員の佐藤直子さん(51)は、比率ばかりが注目されることに疑問を呈した上で、キャリアパスが男女で異なっていたり、女性管理職の配置が偏っていたりすることが問題だと指摘する。

佐藤さんは民間企業で2年間働いた後、1998年に入庁。9年目、30代前半に人事や給与制度などを担当する部署に異動した。それまで児童館や本庁で庶務業務をしていたが、全く経験のない条例改正や職員組合との折衝を担うことに。一方、同じ職場にいた同年代の男性職員はいずれも人事や給与制度を扱った経験があり、女性は計画的な育成がされていないことに気が付いた。

こうした経験を踏まえ、40代半ばで放送大大学院に入学し、女性地方公務員のキャリア形成について研究を始めた。その結果、男性は入庁初期から管理職に必要な調整力や説明力を培う業務を経験するのに対し、女性はほぼ経験せず庶務業務を担っていることが判明。また、女性は管理職になっても広報や文化、子育てなど偏ったポストに登用される傾向にあることも分かった。

佐藤さんは「自治体の意思決定に影響を与えるポジションに女性が置かれていない」と指摘。「男性中心でつくられた価値観に違う視点を入れることは組織運営上のリスク回避につながる可能性が高い」と、女性が関与する重要性を訴える。

都道府県庁で女性管理職の割合が2016年から9年連続全国1位の鳥取県。幹部職員が担う業務の一つに議会答弁があり、以前は「女性には難しい」といった思い込みもあったが、意識改革を図り、男女関係なく計画的な人材育成を進めた。

県庁のナンバー3、池上祥子統轄(とうかつ)監(60)は、これまで文化振興監や生活環境部長といったポストを歴任してきた。「女性だからという理由で何かを我慢するということはなかった。順を追った任用で、(今の仕事に)過去の経験が生きている」と、自身の経験を踏まえ計画的なキャリア形成の必要性を強調した。

【編集後記】組織が女性の積極登用をうたう陰で、培ったキャリアと関係のない分野で管理職に昇任した女性のやるせない表情を今も覚えている。こうした無計画な人事配置は、本人の自信を喪失させる懸念がある。加えて「女性にこのポストは難しいのではないか」といった同じ職場で働く人の思い込みにもつながっているのではないか。男女問わず、管理職になったときに困らない人材育成が広がってほしい。(時事通信国際女性デー取材班)。

【時事通信社】 〔写真説明〕 〔写真説明〕取材に応じる川崎市職員の佐藤直子さん=2月17日、横浜市 〔写真説明〕鳥取県統轄(とうかつ)監の池上祥子さん=2月10日、鳥取市

2025年03月09日 06時45分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース