ナゴルノ、情勢不安続く=アルメニア系が敗北―27日で交戦3年



アゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフで2020年9月、大規模な交戦が起きて27日で3年となる。当時、双方は約1カ月半で停戦に合意したが、その後も緊張は継続。節目を前にした今月19日、アゼルバイジャンが軍事作戦に踏み切り、現地のアルメニア系勢力は1日で事実上降伏した。アゼルバイジャンが軍事力で圧倒したものの、アルメニア側には不満が強く、情勢が安定するかどうかは不透明だ。

◇避難で混乱

3年前の停戦を仲介したロシアのプーチン大統領によると、当時の交戦で双方の約5000人が死亡。アルメニア側は支配地域の多くを失い、敗北した。

昨年12月からアルメニア本土とナゴルノカラバフ間の回廊が封鎖され、アルメニア系勢力の弱体化が進む中、アゼルバイジャンは今回、対テロ名目で攻撃。同勢力は20日、武装解除を含む停戦に応じた。アルメニア系住民の間では、「民族浄化」に対する懸念が高まり、本土への避難民が続出。アルメニア政府によると、26日時点で1万9000人に達した。

混乱も生じており、住民が車で避難するため燃料の調達に集まっていたナゴルノカラバフの給油所で25日、爆発が発生。地元当局によれば、20人が死亡、280人以上が負傷した。

アゼルバイジャンは20日の停戦合意に基づき、住民の権利と安全の保障を約束すると強調し、21、25両日にアルメニア系勢力と協議を重ねた。しかし、アルメニア側の不信感は消えていない。

「20年11月の停戦合意に反し、住民は民族浄化の脅威に直面している」。アルメニアのパシニャン首相は24日、こう述べた上で「責任はアゼルバイジャンとロシア(平和維持部隊)にある」と非難した。

◇活発化する外交

パシニャン氏とアゼルバイジャンのアリエフ大統領は10月5日、スペイン南部グラナダでの「欧州政治共同体」会合に合わせて会談する見通し。3年前の停戦がほごにされたことから、紛争を凍結するだけでなく、恒久的な和平へつなげられるかが課題となる。

双方は後ろ盾を強化しようと、外交を活発化。同盟国ロシアから米国に接近するパシニャン氏は25日、首都エレバンを訪れた米国際開発局(USAID)のパワー局長と会い、避難民支援の約束を取り付けた。アリエフ氏も25日、アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェワン自治共和国で「兄弟国」トルコのエルドアン大統領と会談した。

ただ、アルメニアは20年に続く2度目かつ決定的な敗北を短期間で喫した。「歴史的領土」を巡って徹底的に抗戦しなかったため、パシニャン氏は国内で「裏切り者」と批判されている。抗議デモを続ける野党勢力はアリエフ氏との会談に期待できないとして、首相を辞任するようパシニャン氏に迫っている。

【時事通信社】 〔写真説明〕演説するアルメニアのパシニャン首相=24日、エレバン(アルメニア政府提供)(EPA時事) 〔写真説明〕25日、アルメニアの首都エレバンの市街地で政府に抗議する市民ら(AFP時事) 〔写真説明〕25日、ナゴルノカラバフからアルメニア南東部の町付近に到着したアルメニア系住民(EPA時事)

2023年09月26日 22時24分


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