日本政府は今年、ウクライナの汚職撲滅の支援に乗り出す。同国政府からの要請を受けたもので、法執行機関の取り組みを強化するためのプログラムを年内にスタートさせる。司法制度改革なども併せて進め、同国に着せられた「汚職大国」の汚名返上と欧州連合(EU)加盟を後押ししたい考えだ。
ウクライナのスハク司法副大臣は昨年12月、東京都内で開かれた日本政府関係者との会合で「ウクライナは汚職対策の分野で深刻な問題を抱えている」と指摘。「汚職をほとんど許さない国である日本との協力関係の発展に関心を持っている。日本の経験から学び、生かしたい」と語った。
国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2023年のランキングによると、ウクライナの「清潔度」は180カ国・地域で104位。この状況はEU加盟交渉に加え、ロシアの侵攻に対抗するための各国からの支援の呼び込みにも影響しかねないと指摘されてきた。
世界銀行などの23年末時点の試算では、ウクライナの復興費用は今後10年で4860億ドル(76兆4000億円)と見込まれているが、「今のままでは高級官僚の懐にかなりの額が流れる恐れがある」(日本政府関係者)との見方も出ている。
日本は同ランキングで16位。過去30年間、10カ国以上で汚職対策などの「法制度整備支援」に取り組んできた。ウクライナ政府がこうした実績に着目し、昨年1月に協力を打診。同8月に小泉龍司法相(当時)が首都キーウ(キエフ)を訪問し、汚職対策や司法改革を柱とする覚書を締結した。25年度予算案には法制度整備支援の経費として2億7500万円を計上した。
日本政府は今春までウクライナ政府と実務レベルの協議を重ね、具体的な支援を年内にスタートさせたい考えだ。法執行機関の人材の育成に向け、日本やウクライナで研修やセミナーを行う方向で調整している。日本政府職員を現地に駐在させる選択肢も検討している。
ロシアのウクライナ侵攻開始から3年の節目を来月に控え、国際社会では停戦圧力が高まっている。法務省幹部は「復興フェーズに入る前に一日も早く成果を出す必要がある」と語った。
【時事通信社】
2025年01月06日 12時46分
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