「金利のある世界」が到来し、長らく続いた住宅ローンの金利引き下げ競争に終止符が打たれた。多くの銀行が金利引き上げにかじを切ったほか、ローン契約者が返済できなくなった場合の保障など、金利以外のサービスで差別化する動きも広がる。顧客争奪に向け、各行の戦略が多様化してきた。
インターネット専業のPayPay銀行は、一つの物件に対して夫婦やパートナーがそれぞれローンを組む「ペアローン」契約者向け団体信用生命保険(団信)を拡充。死亡や重い病気で1人が返済できなくなった場合、2人のローン残高がゼロになる「ペア連生団信」の取り扱いを昨年6月に始めた。
従来のペアローン団信は、1人分のローンが残る。共働き世帯の増加や物件価格の高騰を背景に、2人で組むローンが注目されており、りそな銀行なども同様の保障を導入している。
三井住友信託銀行は昨年10月、46~55歳が加入できる手厚い疾病保障付き団信の取り扱いを始めた。多くの銀行は保障内容が同程度の場合、50歳までが加入条件。同行ローン業務推進部の三上進部長は「40代以降は健康への不安が付いて回る。金利競争ではなく、ニーズに合ったサービスは有償でも受け入れられる時代が来た」と話す。
みずほ銀行は、借入時に手数料がかからない住宅ローンの取り扱いを国内で初めて開始した。金利は従来型より年0.2%高いが、4000万円借り入れる場合、初期費用が約91万円も減るため、早く完済したい層の需要を狙う。
イオン銀行は、ローン完済までイオングループの店舗で買い物する際に代金を5%割り引く。三井住友銀行はクレジットカード利用時に条件付きでポイント還元率を上乗せする。
住宅ローン比較診断サイト「モゲチェック」の塩沢崇氏は、「基本的には金利と団信のどちらかで選ばれるので、保障で差別化していくのは自然な流れだ」と指摘。住宅購入を予定している人に、「今後は団信の価値を含めた比較が大事になる」とアドバイスしている。
【時事通信社】
〔写真説明〕新築住宅(資料)
2025年01月06日 14時53分