「能動的サイバー防御」関連法案が18日、審議入りした。日本でも政府機関や企業を狙ったサイバー攻撃が相次ぐ中、野党も導入に一定の理解を示すが、情報流用や主権侵害などを懸念する声は根強い。厳格な運用を担保する「歯止め」の在り方が問われそうだ。
情報通信研究機構(NICT)によると、国内で観測されたサイバー攻撃関連の通信は、過去10年間で10倍超に急増。石破茂首相は18日の衆院本会議で「サイバー対処能力を抜本的に強化するため、政府として法整備を行うとともに、運用面の強化にも取り組む」と強調した。
関連法案は、平時から通信情報を取得・分析し、攻撃元サーバーに侵入・無害化することを可能にする。
通信監視は当事者の同意を必要としない。政府は、取得情報の利用を罰則付きで厳密に規定。メールの本文など「意思疎通の本質的内容」は削除するとしている。
これに対し、立憲民主党の山岸一生氏は本会議で「中身を見なくても、通信の場所、相手、頻度などを分析するだけで、人の関心や行動、関係性を把握できる」と述べ、プライバシー侵害につながる可能性を指摘。首相は、IPアドレスなど分析対象となる情報を「自動的な方法によって限定する処理を行う」などと理解を求めた。
侵入・無害化を巡っては、共産党の塩川鉄也氏が「先制攻撃に当たり得る」と疑義を呈した。首相は「国際法上許容される範囲内で行う」と明言。実施する際は、国家安全保障会議(NSC)で対処方針を定めるなど手続きを踏むと説明した。
一連の措置は原則、新設する独立機関「サイバー通信情報監理委員会」の事前審査・承認が必要な仕組みとした。しかし、侵入・無害化は「いとまがない場合」に事後通知も可能だ。
事後通知がなし崩し的に常態化するとの見方に対し、首相は「迅速かつ的確に承認が行われる」と述べ、あくまで例外的なものだと主張。一方で、監理委の体制については「適切に整備する」と述べるにとどめるなど、実効性への不透明感はなお拭えない。
【時事通信社】
〔写真説明〕衆院本会議で答弁する石破茂首相=18日午後、国会内
〔写真説明〕衆院本会議で能動的サイバー防御法案が審議入りし、趣旨説明する平将明サイバー安全保障担当相=18日午後、国会内
2025年03月19日 07時04分