中東情勢の緊迫化を受け、企業が手元資金の確保に動いている。銀行が取引先に設定する融資枠の利用額残高は、4月末に前年同月比39%増の12兆7233億円と、新型コロナウイルス禍の最中だった2020年春を上回る伸びを記録。原油高などで仕入れ費用が膨らんでも、運転資金が不足するのを避ける狙いがあるとみられる。金融機関も顧客の情報収集を強化したり、特別融資を開始したりして、企業の資金繰りを支援する構えだ。
融資枠は「コミットメントライン」と呼ばれ、あらかじめ設定した契約額の枠内で、企業が迅速に資金を借り入れることができる仕組み。日銀によると、契約額の合計は米国がイラン攻撃に踏み切った2月末時点で計55兆円程度だったが、4月には59兆円程度と4兆円増えた。例えばSUBARUは3月末、大手行などと計1000億円のコミットメントライン契約を締結。その狙いを「変化が激しい事業環境の中で、資本効率の最適化と資金調達手段の多様化を図る」と説明した。
コミットメントラインの契約額や利用額は過去最高水準に膨らんだ。東京商工リサーチの坂田芳博情報部課長は「円安や物価高、中東情勢の混乱を受け、予防的に資金調達枠を広げる動きが出ている可能性がある」と指摘。日銀の植田和男総裁も「今後の展開に備える動き」との見解を示している。
企業の資金繰りは足元で、「差し迫った状況ではない」(大手行)とみられる。ただ、中東緊迫が長期化した場合、「不安が顕在化していくことになりかねない」(商工中金の関根正裕社長)と懸念する声も上がっている。
三菱UFJ銀行が全国の支店で中東関連の担当者を決めるなど、金融機関は顧客の情報を収集している。日本政策金融公庫は3月に中東関連の相談窓口を設置。5月末までに約6600件の相談があり、約3000件の融資を承諾した。
また、みなと銀行(神戸市)は4月、原油価格の高騰などで影響を受けている企業に対し、最大5億円の特別融資を開始。関西みらい銀行(大阪市)も総額500億円の融資ファンドを設けている。
2026年06月05日 09時21分
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