
政府が掲げる国内の船舶建造量を倍増する目標の実現へ、全国各地の造船所で設備投資の動きが本格化してきた。すでに大型クレーン導入や地震で被災したドックの復元など官民合計で9000億円規模の投資が決定した。造船各社の投資意欲は旺盛で「倍増以上」の建造量を目指す拠点もあり、投資総額は1兆円を超える勢いだ。
国内最大手の今治造船(愛媛県今治市)は、丸亀事業本部(香川県丸亀市)、西条工場(愛媛県西条市)などの拠点で、大型重量物をつり上げるジブクレーンの導入や、鋼板の溶接能力を高めるロボットの投入を計画する。国土交通省は「造船業再生基金」を通じて、今治造船グループに約1138億円の助成を決定。支援額は最大で、全体の投資額は3000億円規模と想定される。建造量倍増をにらみ、同社は「常に生産量を見極める必要がある」と動向を注視している。
函館どつく(北海道函館市)は1993年の北海道南西沖地震で被災し、使用不能となった「4号ドック」復活に乗り出す。まずは水を抜いて状態を確認した後、復旧作業に入る予定で、2032年ごろの建造再開を見込む。復元すれば、24年に5隻程度だった小型のばら積み貨物船(バルカー)の建造数は倍以上になる見通し。親会社の名村造船所の主力拠点、伊万里事業所(佐賀県伊万里市)に対する投資も合わせて、2社は今後10年で、最大約1500億円(国の支援額約499億円)を投じる計画だ。
基金から約156億円の助成を受ける川崎重工業は、人工知能(AI)ロボットの実用化などで坂出工場(香川県坂出市)のデジタル化を進める。熟練溶接工など人手不足の課題解決へ、橋本康彦社長は「造船現場を変革する」と強調する。大島造船所(長崎県西海市)では、香焼工場(長崎市)にクレーン導入や建屋整備を行う。31年ごろにはバルカーの建造数は現行の2.5倍の10隻程度と倍増以上となる。
中韓勢に押されて低迷する国内造船業だが、政府の戦略投資17分野の一つに選ばれ、35年までに官民で1兆円規模を投資し、国内建造量を24年比で倍増の1800万総トンに引き上げることを目指す。ただ、クレーンなど建造設備のコストは年々上昇し、計画通りに進むのか課題も多い。造船関係者は「政府の支援は大変ありがたいがキャッシュアウトも大きい。精査が必要だ」と気を引き締めている。
〔写真説明〕今治造船丸亀事業本部の造船用クレーン=2025年11月、香川県丸亀市
〔写真説明〕北海道南西沖地震で被災し、使用不能となったドックの復活を目指す「函館どつく」の函館造船所(同社提供)
2026年10月25日 07時07分