【ロンドン時事】今年のノーベル各賞が6日から発表される。平和賞は10日で、かねて獲得への意欲を隠さないトランプ米大統領は、選ばれなければ「米国への侮辱だ」と主張。ただ、専門家の間では可能性は極めて低いとされており、アフリカの紛争解決に取り組む草の根団体や、ジャーナリストの権利擁護団体などを推す声が多い。
トランプ氏を巡っては、何とか取り入りたい各国首脳が「あなたは平和賞にふさわしい」と持ち上げており、同氏は9月30日の演説で、改めて自分は世界各地で紛争を解決してきたと主張。「平和賞を受賞できるだろうか。絶対にない」と謙そんするそぶりを見せながらも「(受賞を逃せば)わが国にとって大きな侮辱だ」と強弁した。
しかし、AFP通信などによると、在オスロの専門家らは「全く考えられない」と一蹴。歴史家オービン・ステネセン氏は「平和賞は国連を通じた国際協力を守ること(が目的の一つ)であり、(米国第一主義を唱える)トランプ氏はその原則を破っている」と指摘する。
オスロ国際平和研究所(PRIO)のグレーガー所長は、トランプ政権下の米国が世界保健機構(WHO)や地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」などから離脱したことを挙げ、「平和的な大統領や、平和の促進に本当に関心を持っている人物を考える時、私たちが思い浮かべるものと(言動が)一致しない」と述べた。
今年の平和賞には338団体・個人がノミネートされている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のハガグ所長はAFPに対し、「世界の忘れられた戦争」を終わらせるため地道に取り組む活動家らが評価されるべきだと指摘。一例として、内戦が続くアフリカ北東部スーダンの人道支援団体「緊急対応室(ERR)」を挙げた。
ほかに有力視されるのは、記者らの権利擁護団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」や国際司法裁判所(ICJ)、獄死したロシアの反体制派指導者ナワリヌイ氏の妻ユリアさんらだ。昨年は核廃絶を訴える日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に贈られた。
各賞の発表は、生理学・医学賞6日、物理学賞7日、化学賞8日、文学賞9日、経済学賞13日。12月10日に平和賞はオスロ、ほかはストックホルムで授賞式が催される。
〔写真説明〕トランプ米大統領=9月30日、米南部バージニア州クアンティコ(AFP時事)
2025年10月05日 19時02分