EU、「ドローンの壁」構築急ぐ=領空侵犯相次ぎ、費用対効果も重視



【ブリュッセル時事】ロシアのものとみられるドローンによる領空侵犯が相次ぐ中、欧州連合(EU)が「ドローンの壁」と呼ぶ新たな防衛網の構築を急いでいる。レーダーやセンサーでドローンを探知・追跡し、通信妨害などで無力化する仕組みだ。安価なドローンに高額な迎撃ミサイルを使わずに済ませる狙いもある。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は9月10日の施政方針演説で「欧州は領土を隅々まで守り抜く」と強調し、「壁」構想を打ち出した。9~10日、ロシアのドローン20機前後がポーランド領空を侵犯。その後もルーマニアやデンマークなどで確認され、対策を求める声が一気に高まった。

欧州防衛の要である北大西洋条約機構(NATO)も、対ドローン防衛網の構築でEUと連携する構えだ。ルッテ事務総長は「たかだか数千ドルのドローンを破壊するのに、何百万ユーロ、何百万ドルのミサイルは使えない」と述べ、費用対効果の観点からも取り組みの重要性を説く。

しかし、フランスのマクロン大統領は、ロシアと接するEU東部の境界が長大に及ぶことを踏まえ、「欧州に完璧な壁など存在しない」と指摘。ドイツのピストリウス国防相も「3~4年で実現できる構想ではない」と慎重姿勢を示す。さらに、イタリアのメローニ首相は「南方(の守り)を忘れてはならない」と主張するなど、加盟国間の見解はまとまりを欠く。

一方、「壁」の構築にはロシアとの戦争でドローンを駆使してきたウクライナの知見が活用される見通しだ。EU議長国を務めるデンマークのフレデリクセン首相は今月2日の共同記者会見で「不幸にも『専門家』となったウクライナの経験から学びたい」と強調。ウクライナのゼレンスキー大統領も「実戦経験を持つわれわれが計画の原動力になり得る」と応じた。

〔写真説明〕欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長=9月30日、ブリュッセル(EPA時事)

2025年10月05日 19時01分


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