いじめ解消「学校任せ」脱却=地域で悩み受け止め対策―こども家庭庁



2023年度の小中高校と特別支援学校のいじめ認知件数は73万2568件に上り、3年連続で過去最多を更新した。学校での防止が求められる一方、教員に相談しづらい場合や学校外の事案は解決が難しい。こうした中、こども家庭庁は、学校だけに対応を任せるのではなく、自治体の首長部局が関与し、地域で子どもの悩みを受け止めて対策を講じる実証事業を実施。いじめ解消に向けた取り組みを広げようとしている。

実証事業は、自治体に委託し、専門家を交えたいじめの相談・解決の仕組みをつくるもの。こども家庭庁幹部は「学校任せにせず、地域で解消を図ることが必要だ」と強調する。

大阪府八尾市は、20年度から市長部局にいじめ担当部署を設置し、電話や手紙で相談を受け付けている。22年度は78人から声が寄せられた一方、学年が上がるにつれて手紙は減り、電話の利用は保護者に偏る課題があったという。

そこで23年度からこども家庭庁の事業を活用し、市長部局として全国に先駆けていじめ報告相談アプリを導入した。チャットにより匿名で相談でき、内容は原則として学校に伝えない。24年度は7月末時点で、アプリだけで159人から声が届いた。

相談はいじめに加え、家族関係など多岐にわたり、心理士らが助言をする。市の担当者は「いじめの要因はさまざまで、同じ服を毎日着ているといった金銭や家庭の事情もある。市の場合、学校では難しい福祉的な支援につなげられる」と話す。

熊本市は23年10月から1年間、地域の子どもらに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」と連携したいじめの把握を実証。子どもに身近な食堂スタッフが相談を受け、必要に応じて地元NPO法人に対応を依頼する仕組みだ。

市の担当者によると、「無理やり聞き出すのではなく、日ごろの会話の中で聞いてあげる」姿勢を大切にしており、延べ56件の相談を受けた。基本的に学校と共有しないが、自傷行為が確認されたケースでは市を通じて学校に報告し、見守りにつなげたという。

食堂スタッフを対象に、子どもとの接し方に関する研修も行った。声掛けの仕方や子どもの権利侵害がテーマで、児童福祉の専門家らが講師を務めた。子どもの悩みを受け止める地域人材の育成が目的で、将来的に市全域へ広げたい考えだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕大阪府八尾市が導入したスタンドバイ(東京)のいじめ報告相談アプリの画面(同社提供)

2025年01月01日 07時11分


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