【ニューヨーク時事】トランプ米大統領は就任初日の20日、公約通りに地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱を命じた。米国に過剰負担を強いる「ぼったくり」と協定を批判。気候変動対策を重視したバイデン前政権の方針を180度転換し、電気自動車(EV)普及策も撤回した。
米国は二酸化炭素(CO2)排出量が中国に次ぐ世界2位。累積では圧倒的な首位ということもあり、途上国の気候変動対策に多額の資金を拠出してきた。一方、気候変動自体に懐疑的なトランプ氏にとっては、先進国に応分の負担を求める協定の仕組みは支出がかさむだけのいら立たしい存在だった。
世界の気温上昇には歯止めがかからず、特にインフラが脆弱(ぜいじゃく)な途上国では豪雨や海面上昇などの被害が深刻だ。ケニアのアリ・モハメド気候変動特使は19日、米新政権に対し「気候変動との闘いを加速するため模範を示してほしい」とパリ協定に残るよう声明を出したが、声は届かなかった。
トランプ氏は20日、前政権による化石燃料の生産抑制が物価高を引き起こしたとして、エネルギーの「国家非常事態」を宣言。石油や天然ガスの開発を迅速に認可することなどを規定した。増産すればガソリン価格や電気代が下がるとの考えに基づいている。
ただ、トランプ氏のもくろみ通りに進むかは不透明だ。米国の石油とガスの生産は前政権下でも伸び続け、過去最高水準に達している。物価を押し下げるほどの増産は容易ではないとみられる。
【時事通信社】
〔写真説明〕米国の石油掘削施設=2016年1月、テキサス州ミッドランド(AFP時事)
2025年01月22日 12時54分